ツキハヒガシニ

    

2025年4月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

メモ

    
4/17 最近気づいたこと

・ハウメアぽいのなんかどっかで見たんだけどな⇒リアーナのLove On The brain でした 曲名も含めてハウメアぽい 熱い
・KANA-BOONの2番だけじゃなくてミセス「延々」の「飽きないくらいが~足りちゃいない」も秋樽ってこと? エモい
・先代が鹿なの「大馬鹿野郎だから鹿なのか~」としか思ってなかったけど、いや中務の意思じゃん?!熱っ!!

ハマりたてなのでなにを今更みたいなことで今更騒いでしまう

ウルサイレンのpump up the volumeも筋肉のパンプアップとかけてるのかもと思うとそれはもう秋樽
ラダマーシー(lord have mercy:主よ、憐れみを)もただの常套句なんだけど炎炎の内容踏まえるとピッタリで良いですね
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SS

    
江戸之華
浅草町民目線、エピローグ前のどこか


 火消しになれば、いの一番に火事場に出向ける。炎そのものはもちろん、人や家が焼ける時にどんな風に色が変わっていくのかも間近で見られる。業火の迫力と絢爛さをこの身で知れば、描く絵も自然と動き出す。
 本物の火事場を描きたい。だから火消しをやりたいのだ。そんなことを言えば余所じゃ狂人扱いだが、ここ浅草に流れ着いてからは「役に立つんなら好きにしろ」と万事受け入れてもらっている。
 俺が入った後に途中から皇国の犬になったのは気にくわないものの、浅草流の景気の良い燃やしっぷりは最高だ。焔人のおかげで、この世で一番美しい光景が次から次へと湧いてくるんだから、腕がいくらあっても描き足りない。
「あんたうまいんだから、どうせ描くなら紅丸ちゃん描いてよ」
 ガキンチョからババァまで、女どもは口先揃えてそう催促してきやがる。
 そりゃぁ、紅丸に似寄った美丈夫を浮世絵にすれば瞬く間に売れて金にはなるさ。ただ、金になるってだけだ。アイツの火消しとしての力量はともかく、画題にするには及ばない、まだ深みも色気も足りないケツの青いガキだ。
 そう思ってたってのに、それがどうして、最近妙な色がのってきやがった。
「若もいよいよ腹括ったからな。頭としての自覚が出てきたんじゃねェか?」
 紺炉に尋ねて返って来たのは到底納得できない説明だった。馬鹿を言うな。男として固まったんじゃなくて、ありゃむしろ溶け切ってんだよ。


 あの紅丸が惚れた相手だ。さて、どこのお嬢か花魁か。空っぽの財布をはたいて聞き込みをしてみたものの、とんとさっぱり、皆揃って心当たりなどないと首を横に振る。それでも、花街でちっとばかし気になる噂は耳にした。
「そういえば、第八の大隊長さん今週は来てないの?」
 どうやら最近、紅丸の馴染みの茶屋に皇国の消防官が時折出入りしているらしい。前に浅草にやってきて騒ぎを起こした第八連中で、その中でも一番お偉いさんの大男だ。
 身内には話しにくいことも、余所者相手じゃかえって口が滑るなんてのはよくある話。あの男に聞けば何かしら分かるかも知れない。
 そうして、俺は暇さえあればあの男を探し回った。記憶では原告の血が濃い見た目をしていたから浅草にいても違和感はないだろうが、あの人並外れた長尺はさすがに目立つはずだ。


 期待したものの空振り続きで諦めかけてた時分の、小雨降りしきる夜半のことだ。呑み屋の帰り道に、町外れの橋の上にそれらしき影を見た。すかさず走り寄ろうと思ったが、隣にもうひとつ別の影があるのに気づいて、咄嗟に川沿いの柳の陰に身を隠した。
 夜更けにくわえて生憎の雨とくれば人通りはない。一本の番傘の下に二人、赤い太鼓橋の丁度まんなか辺で足を止め、欄干から川を眺めている。少しすると、紅丸の手が傘の柄を持つ男の手へと伸び、強引に引っ張るでもなく手の甲辺りにそっと触れた。斜めに傾いた傘の下で見つめ合う二人は、絵師の自分が嫉妬しそうなほどに完璧な構図のまま、ゆっくりと顔を寄せ合った。惚れ惚れするような光景だった。
 静かな雨の夜。それでも確かにあの時あの場所は燃えていた。ちゃちな物言いにはなるが、恋の炎が燃えているのを見た。あのスカしたガキが蝋燭みたいに溶かされて、いとしいいとしいと表情だけで泣き叫ぶ様を見た。
 水揚げしたばかりの遊女が放つ、饐えた甘さに似ている。蛹が蝶になる瞬間は、どうしてこうも美しい。真白な繭にはもう戻れない絶望の香りは、何故人を狂わせる。
 そっからはもう、夢中だった。火事がしばらく起こらなかったのか、それとも部屋に籠っていたせいで気が付かなかったのかは分からないが、外へは一歩も出ずにひたすら描き続けた。紅丸の火ならこれまでに何遍も見てきたから、その激しさも派手さも頭ん中にある。そこへさらに、恋の炎の色がのった。
 炎はあくまでも見るもん描くもんだと思ってた俺が、まさかの初めて思ったよ。お前の炎に焼かれたいって。


「おい、火元はどこだ?」
「徳兵衛んとこだ! ヤゲン通りの西っ側にある長屋で突然火が上がったらしい。アイツぁ独り身だから、恐らく焔人になったのも本人だろう」
「そうか………」
 宙へと放り投げられた纏達が、一斉に炎を纏う。場所は近い。一本の纏に乗った紅丸は、紺炉が言っていた長屋の裏手まで一挙に飛び、燃え上がる焔人の背後へと降り立った。
 着地の物音に反応して振り返った焔人は、紅丸を見ると、あ、ぁあ……と言葉にならない呻き声をあげながら近づいてきた。
「お前ェ、火事が出るたんびに、こっちの気も知らずにやんややんやと喜びやがってよ。纏よりも先に筆とるような野郎が、最後にはこの有様とは情けねえなぁ」
 紅丸は焔人の炎には一切臆せず、近づいてくるのに任せその場に立ち続けた。焔人の辛うじて光を残した目が、ギョロリと眼球を回転させて紅丸を見る。前方に伸ばされた黒い腕が紅丸に向かう。指先が顔に触れるまであと三寸、あと一寸――
「べに、おまえのほの…お……きれいにな…た、な」
「……見世物じゃねェんだ。いくらきれいになっても、痛ェのは変わんねェぞ」
 すまねェが我慢しろ、と詫びるのとほぼ同時に、炎を纏った腕が黒く焦げた体の中央を貫いた。


「これ、机の上にあったから最後に描いてたやつでしょうかね。ちょっと焦げてるし……」
 徳兵衛の部屋から出てきた新平太は、下絵の描かれた一枚の和紙を手にしていた。それを紅丸が一瞬目に入れようというタイミングで、到着したばかりの紺炉が横から取りあげた。
「どれどれ。こりゃ、弁慶と牛若か……相変わらず、背景は火の海だな。しかし、この牛若…もしかして紅か? でも、だとしたらこっちの弁慶は――って、なにすんですか?!」
「遊んでねェで、さっさと片づけろ」
 手の中で灰になった和紙の残骸が地面に舞い落ちるのを見ながら、紺炉がため息を吐く。
「あーあ、折角の徳兵衛の遺作だってのに」
 焜炉の窘めるような視線を二本揃えた指先で払いのけた紅丸は、片肌脱ぎになっていた着物を整え、先ほど燃やした男の灰が積もる地面に目をやった。
「本人が最期に言ってた気がすんだよ。俺に全部焼いて欲しいってな」


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メモ

    
4/15 二夜明けの所感

昨日の投稿があまりに同人女賢者タイムでドキュメンタリー感がすごい
ダウナーなムーブに見えたら申し訳ない 全然そんなことないです
バリバリ書きます

サイト経由で来て謎の狂いっぷりを眺めて楽しんでる人がほとんどだと思ってたのでもう本館の方とまとめてもいいかな~と考えてたんですが、まさかの紅備目当てで見てくれてる人がいる(?!)ぽいので、見やすいようにこのままで続けます

とはいえ無理せず 来たい時に来て 飽きたらやめてもらって
反応感想とかもあったらふつうに喜ぶけど無いなら無いで全然元気な方なので
自由にやりましょう
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渡世人若
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攻めに渡世人(というか木枯し紋次郎)の格好をさせるのが癖なのかもしれない

絶対似合うと思ったのに意外と似合わなかったので上半身だけ
そもそも淋しいのに耐えられなそうだから一人で流れ者とかしそうにない

紺炉とチビ紅でおむすびまん・こむすびまんみたいに二人旅して欲しくはある

メモ

    
4/14 一夜明け
夢だったらどうしようと思ったけど夢じゃありませんでした
紅備良いよね…改めて良い

なんか目的をほぼ達成した感があるのでこの場所ももういいかどうしようかなと考えてます
ハマって一ヶ月でこの展開はあまりにデキすぎなので、ここらでパッケージングしてしまいたい気もする

    
そのキャラ(CP)を好きな人がつくったそのキャラ(CP)の良さを引き出した二次創作を見るとさらにそのキャラ(CP)を好きになるという無限ループ

    
自分の投稿の方もいいね押してもらえててありがたい限りです
同ジャンル者の波動を感じると元気になるね

    
妖怪が人間としての形を保ったギリギリみたいな感想を送った
無駄なく全文が良い小説に怯えさせない長さで感想言うのほんまムズイ

少しでもまた書こうかなのきっかけになったんだとしたら支部に投稿して良かったな
これが天岩戸踊りか…

とか思ってたらドセンスの塊みたいな人が紅備描かれてるのも見つけてしまい(BlueSkyで検索しよう)いよいよ鎮魂されそうです

夢??

    
うおあ~どちゃくそ萌えるうえに文章がうまい…酒がうまい

こんな同人女の感情みたいなことあっていいんでしょうか
そしてこんなにこんなに興奮してるのに誰にも言えずにここで叫ぶしかないの、改めて変な趣味すぎないでしょうか

    
ほんとうれしすぎて無理
最愛開ける

    
うおあああ
しぶに紅備の新作をあげてくださっている
無理無理無理無理

SS

    
シンラクサカベは受け入れられない 4
森アイのターン



「アーサーが言うには『救出イベントに成功してるんだから当然の結果』だって。なんだよそれ。そもそもあの時助けにいったの俺たちが先じゃんか」
 歩行者天国の賑やかな通りに面したオープンカフェ。パラソルの影の下で、透明なグラスに入ったアイスコーヒーを啜った後にストローを噛む。丸いテーブルを挟んだ向かいの席で、俺のぼやきを聞いたアイリスが不思議そうに首を傾げた。
「でも、シンラさんは本当に気づいてなかったんですか? ちっとも?」
「それは――」
 アイリスの指摘は鋭く、俺の後ろめたさを的確に刺した。
 実のところ、明言こそしないまでも隠す気もさほど無かったのだろう二人の行動には、オグンに聞かされる以前から俺も引っかかっていた。総隊長は帰る機会のそう多くない自宅を更新のタイミングで浅草の方に移したし、滅多なことでは浅草から外に出たがらなかった新門総指揮を元第8の詰所でちょくちょく見かけるようになっていたし。あとは、部下相手にでも割と丁寧に接する総隊長が指先だけで指揮官を呼びよせたり、総隊長が若い隊員に囲まれてる時の指揮官の顔がやたら不機嫌そうだったり。
 思い当たる節を脳内で並べてみると、それなりにある。やっぱり、気づいてなかったというよりは……
「気づかないふりしてた……の方が正しいかも知れないですね」
「正直、私は紅丸さんのことあまり良く知らないんです。前の世界の時もシスターの身では浅草に行きづらくて、あまりお話しする機会も無かったですし。でも、シンラさんやアーサーさん、タマキさんからお話を聞いてると、それだけでいい人だって分かりますよ」
「もちろん、俺にとってはどっちも憧れの存在なのは間違いないんですけど。あまりに意外というか……」
「私も、桜備さんは姉さんみたいに強くてきれいな女の人と結婚するのかなーって勝手に想像したりしたことはあります。でも、それも勝手な想像ですもんね」
「そうですね……意外ではあるけど、他人がどうこういうことじゃないっていうのは分かります」
「じゃあ~……あ、女性関係にだらしないとか? 人気メンさんですし、原国は一夫多妻制もわりとふつうだったって聞いたことがありますけど」
「いや、それも別に……」
 新門総指揮は、酒とギャンブルに関しては懸念点しかないものの、女性関係については意外なほどに身ぎれいだ。悪い噂を聞いたことがない反面、色っぽい噂も耳にしたことがない。とはいえタマキのスケベられも動じないまでもちゃんと見てはいたし、酒の席での猥談にケラケラ笑いながら乗っている姿も見たことがある。それでも、性格的にさして強い興味は無いのだと勝手に思っていた。
 こうしてアイリスと話していると、ますます分からなくなってきた。分からない、もう何が分からないのかが分からない状態だ。
「そんなに気にしなくていいんじゃないですか? 一時の気の迷いで、すぐに別れるかも知れないし」
 うーんと悩んでいるところに彼女の口からにしては意外な内容が出てきて、俺は動揺を隠そうとアイスコーヒーのグラスを大げさな動作でテーブルに戻した。
「でっ、も、責任が生まれるもんじゃないですか。付き合うってなったら」
「そうでしょうか? シンラさんが死を軽くしてくれたこの世界では、愛だってもっと自由になって良いんじゃないですか?」
 アイリスが細い首を後ろに逸らし、頭上を見上げる。つい真似して首を曲げると、ビニール製の白いパラソルの無骨な骨組みが目に入る。初夏の強い日差しは、目を射すほどではないがパラソル越しでもはっきりと感じられた。
「太陽と同じで、永遠に続くものなんてない。シンラさんと私だって、10年先、20年先まで一緒にいるかは分かりません。これから先、もっと好きになったり、やっぱり嫌いになったり……別の人を好きになったりするかも」
「そんなの、ありえないですよ?!」
 アイリスが最後に少し声をひそめて付け足した言葉を、俺は思わず椅子から立ち上がる勢いで否定した。
「ある“かも”っていう話です。でも、信じていたものがたとえ嘘だったとしても、それまでの自分が否定されるわけじゃない。そのことを教えてくれたのもシンラさんじゃないですか」
「まぁ……そんなもんですかね」
 好きな女の子に「いつか嫌いになるかも」なんて言われるのはそれなりに堪える。でも、アイリスの場合は嫌味のつもりなんてこれっぽっちもなくて、思ったことを本当にそのまま言っているだけだと分かるからまだ受け止められた。
 いや、そもそもだ。インカの話題よりはマシかと思ったけど、こんな話を聞かせられて気を悪くしていないだろうか。二人こうして顔を突き合わせて喋るのも随分久しぶりだ。にも関わらず俺はほぼほぼアイリスとは無関係な他人の恋愛話を続けている。俺が彼女だったらぶちギレてる――と思ったけど。
「……アイリス、なんか嬉しそう? じゃない?」
 俺の指摘に驚いたアイリスは、ハッと小さな口を丸く開き、手の平で押さえた。
「あれ? 私ってやっぱり分かりやすいですか? そうなんです。これまでは私の悩みをシンラさんに聞いてもらってばっかりだったから、こうして相談してくれるのが嬉しくて」
「悩みってほどのことでも……」
 今更になって、悩み相談の内容が男としてあまりにも情けない気がしてきた。でも同時に、聖女然とした彼女の笑顔を見ていて、ふと思いついたことがあった。
「……前に、フォイェンさんが言ってたんです。信じるモノがないと人は崩れてしまう、って。大隊長も総指揮もみんなに信じられる側の存在で、それが当たり前に思ってたけど……でもじゃあ、お二人は何を信じたらいいんだろうって……」
「もしかして、がんばって受け入れようとしてますか?」
「まあ、そりゃ……ガキみたいな駄々こねてもしょうがないし」
「……シンラさんは、やっぱり優しいですね」
 大好きです。と、アイスティーのストローを指先でつまんで、ニコ、と音が聞こえてきそうな丸みを帯びた笑顔を浮かべる。
 たとえシスターじゃなくなっても、彼女が自分にとって向日葵のような存在であることに変わりはない。光の方を見ているんじゃなくて、彼女の見ている先に光が生まれるのだ。
 そう思える相手がいるって、すごく幸せなことなのかも知れない。
 アイリスの風にそよぐ綺麗な前髪を見ながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。


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メモ

    
4/13 NATSLIVEコラボかわ
アイキャッチの並び心臓に悪いんですけど
https://cafe.natslive.jp/collabo72

パティシエ服の帽子が全部形違うの芸が細かい

SS

    
シンラクサカベは受け入れられない 3



 慣れない土地での夜間移動は危険が多い。森羅発の予期せぬハプニングで足を止めた一隊は、結局日程の繰り上げはかなわずに当初の予定通り野営地で一晩とどまることになった。
「昼間の件、なんだかんだ楽しんでましたよね」
 横倒しになった木に腰掛けた桜備は、焚き火のすぐ前にしゃがみこむ紅丸の横顔に向かってそう声をかけた。
 迦具土神とまで称された男は、人体発火現象が収まった世でも炎に愛され続けている。今も、火の粉が肌にふりかかりそうな距離で平然としているし、手のひらをかざされた焚き火の火は常時よりも勢いよく燃え、まるで踊っているように見えた。
 桜備の問いかけに紅丸は少し間を置いてから、まあな、と口角を軽く上げた。
「はじめて第七(うち)に押しかけてきた時を思い出した。シンラもあん時は威勢が良かったのに、妙に懐かれちまっておもしろくなかったからな」
「だからって、せっかく負傷者ゼロで済みそうだったのに1人増やしてくれちゃって……」
「あいつが弱いのが悪い」
 きっぱりと言い切った紅丸に対して、桜備もそれ以上文句を言う気は無かった。代わりに昼間の妙に真剣な森羅の顔を思い出しながら目線を遠くに投げ、眉尻を下げた情けない顔で長いため息と独り言を吐く。
「しかし、シンラもなんかゴチャゴチャ言ってたけど、まあ、一番最初のが一番言いたかったことなんだろうなぁ……。なんで教えてくれなかったのか、かぁ。普通上官のプライベートな事情なんて知りたくないと思うんだけど。隠しごとされてたって思ったんなら、悪いことしたのかもな」
「そいつは本人に聞くしかねェだろ」
 ふいに立ち上がった紅丸は、大股で桜備のところまで歩み寄ってくると、目の前に立ちおもむろに右手を持ち上げた。
 伸ばされた手は、桜備の頬と耳たぶを掠めて首の裏に到達した。うなじを包み込み、剃りあげられた髪の毛のきわを確かめるように親指がゆっくりと動く。炎にかざしていた手のひらは、触れられた瞬間に分かるくらいに熱を帯びていた。その熱が伝播するように、桜備の顔にも熱が溜まってくる。炎の揺らめきを反射して滲んだ赤い目が視界に収まらない距離にまで近づいてきたところで、そっと目を閉じた。
 会話が途切れた静寂のなか、パチパチと薪が爆ぜる音が響く。角度を変えながら数度触れて離れてを繰り返したものの、紅丸の舌は薄く開かれた桜備の唇の内には入らず、下唇を横にひとなめだけすると顔ごと離れていった。それに気づいた桜備は、閉じていた目蓋を開いて素早く瞬きを繰り返しながら、拍子抜けした声をあげた。
「え? しないんですか?」
「ダメだ。犬っころの顔が浮かんで気が削がれる……」
 上の方へと視線を向けうんざりとした顔でそうぼやくと、ふいっと身を翻し、焚き火の傍へと戻っていく。その着物の裾を、桜備の手が慌てて掴み引き留めた。
「ちょっ、それはないでしょ」
「あァ?」
「いやだって、アレは煽られますよ、さすがに。別に疑ってたわけじゃないけど、本気で好かれ…や、その…あいされてる自信もないもんで」
 着物を掴んでいない方の手で口元を押さえゴニョゴニョと申し立てる伏し目がちな桜備の顔は、炎に照らされているせいだけではなく不自然に赤くなっていた。訴えている内容の気恥ずかしさのせいか、眉間には皺がよっている。振り返った体勢のまま見下ろし黙って聞いていた紅丸は、おもむろに右手を動かすと、その眉間の皺辺りを狙って指を弾いた。
 っだ!と、デコピンの痛みに桜備が声をあげ手を離す。自由になった着物の裾を捌いて振り返った紅丸は、桜備の短い前髪を掴んで無理矢理上を向かせた。強引な動作に、桜備もさすがに顔をしかめたが文句は言わなかった。
「聞き捨てならねェな。クソガキの件もそれが原因だろ。てめェが自信満々で愛されてれば、誰も文句なんか言わねェんだよ」
「さぁ~……どうでしょう」
「俺が人に指図されるのが死ぬほど嫌いなのは知ってるな?」
 紅丸の突然な質問に、冷や汗をかいている桜備は、無言で、掴まれた状態でも可能な範囲で縦に首を振った。
「唯一てめェだけだ、俺に上から物申していいのは。だから……なにをどうして欲しいのか、一から十まで全部言えばその通りにしてやるよ、総隊長殿」
 そう言って、長い前髪の下の目を細めてニマリと笑う。先にねだったのは桜備の方なのに、やっぱりもういい、などとは今さら言い出せない空気になっていた。


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メモ

    
4/12 アニメ2話見た
なにあの喘ぎg……
アニ炎は大隊長をセクシー要員にしたすぎないか?
大隊長会議後の謎のはだけとかさあ

今回に限らず声がつくと秋樽桜備のクレイジーさが際立つ気がします
まっとうな狂人

あとやっぱりEDが良い
最後のアーサーが出てくるとこの音ハメ具合が最高

---

山田酒造昨日のお昼休みに頼んで今日の朝にはもう届いたからビックリしました 仕事早!

外箱が同人誌の表紙でよく出会うエスプリエンボスアラレだ そして黒箔

メモ

    
4/11 つい
アニメ二話のこと考えてソワソワしてたらつい

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SS

    
シンラクサカベは受け入れられない 2




「新門“大隊長”!」
 意識より先に体が動いていた。発火能力を失った今でも、俺の体はラピッドのスピードを覚えているらしい。ここぞという時の高い集中力が必要だけど、筋肉の力だけでそれなりに速く動ける。脳も、脚も。
 動いた切欠は、遠く視線の先で新門総指揮の手が桜備総隊長の肩に触れるのが見えた時だ。多分。正直自分でも分からない。ただ、その次の瞬間には俺の体は二人の間に割り込んでいた。
「……あァ?」
 俺が突然現れたのもそうだけど、割り込むと同時に叫んだ名前を聞いて、その場にいた全員がなにやら違和感を覚えた顔をしていた。今は使われなくなった、口に馴染んだ新門総指揮のかつての呼び名が出てきたのも無意識だった。
「桜備総隊長と!お付き合いされてるって本当ですか?!!」
 俺が白目を剝いて荒野の果てまで響く声量で叫んだ質問に、一旦辺りが静まり、それからまず、チッ、と舌打ちが返ってきた。
「……だったらなんだってんだ」
 イラついてる顔でこっちを見ながら、俺に弾き飛ばされた右手の甲を摩っている。隙を突かれたのが気にくわないんだろう。俺からしても、意図的ではないとは言え一撃食らわせられたのはほとんど奇跡に近い。この人は、発火能力が無くなった世界でも最強の名をほしいままにしていて、能力のハンデが無くなった今でも実力差はほとんど変わっていない。それなのに、なんで俺は現在進行形で喧嘩を売ってるんだ?
「どうして、俺に教えてくれなかったんですか」
「どうしたもこうしたも、言う必要がねェからなァ。知ったらどうだってんだよ」
「そ、そもそも、なんでですか? お二人共、普通に女の人好きでしたよね?」
「べつに理由なんてねェよ。俺が惚れた時にはまだ売れ残ってたんだ。手ェ出して何が悪い」
「売れ残りって……じゃあ、総隊長のこと本気で好きってことですか?」
 俺がそう質問を重ねると、新門総指揮は顔の左半分だけを歪めて形相を変え、腰の刀を鞘ごと外して右手に持ち替えた。上半身の力が抜けて体が斜めに傾ぐ。どのタイミングでも瞬時に間合いを詰めてこられそうな、嫌な緊張感が漂い始めた。
「馬に蹴られて死にてェのか? 他人の喧嘩とこういうことには、いちいち首突っ込んでくるもんじゃ――……ねェだろ」
 先手必勝、と、稽古の癖もあってつい相手が喋っている途中で脚が出た。が、もちろんそのまま決まるわけもなく、最小限の動きだけで俺の回し蹴りはかわされた。
「新門総指揮のことは心から尊敬してます。けど! 正直コレに関しては全然信用できないです!」
「あァ? 希代のすけこましが何言ってやがる。女のケツ追っかけてフラフラフラフラしてる奴に文句言われる筋合いねェだろうが」
「なっ、そそ、そうですけど! それとこれとは別問題なんで!」
 淡々とした口撃と共に、ガンッガンッガンッ、と軽くはない勢いで右左からリズミカルに叩きつけられる鞘を、勢いに押されて徐々に後退しながらも辛うじていなす。危険を察知したのか、すでに俺たちの周囲に人は誰も居なくなっていて、一部の人は遠巻きにこっちを眺めているた。紺炉さんだけが、他よりもやや近い位置で心配そうな顔をしている。
「とにかく、俺はっ……俺は認めてませんから!」
「だから言ってんだろ。てめェに認めてもらう必要はこれっぽっちもねェ。何様だオイ? ちっと神様んなったからって調子乗ってんじゃねェぞオラ」
「何回も説明してますけど、おれは、神様じゃないんですって!」
「じゃあとっととくたばって仏になれや」
 ガンッ!とそれまでよりも強い力でぶつけられた鞘を右腕で受けるのと同時に、空いた脇腹を蹴られて吹っ飛ばされる。それでも咄嗟に受け身をとる程度の余裕はあって、すぐに体勢を立て直し、両手を前に出して構え直した。
「前に自分で言ってたじゃないですか。意思は戦って証明するもんだって。だったら、俺のことぶっ飛ばして認めさせてくださいよ」
 キッと眉間に力を込めて新門総指揮を見据えていても、内心では、なんでそんな啖呵を切ってしまったのか、この瞬間になっても俺は自分の心情をよく理解できていなかった。混乱と動揺に突き動かされた、ただの勢いだ。でも、撤回するにはもう遅すぎた。
「……喧嘩売ってきたのはそっちだ。腕の一本くらい叩き落とされてもわめくなよ」
 そう言うや、手にしていた刀を投げ捨て、肩に引っ掛けていた羽織も脱ぎ去る。顔の前に見慣れた手刀を構えたその瞬間、新門指揮官の呼吸の仕方が変わるのを感じた。命の呼吸だ。いや、命の呼吸を超えて一気に重量級の死の圧を感じる。冷や汗がドッと噴出して、口角が引きつっていく。ついさっきインカの巨大モンスターと対峙したよりもよっぽど激しく、本能が身の危険を訴えていた。
「おいシンラ」
「……はい」
 落ち着いた声色で呼びかけられ、乾いた喉に張り付きそうになった声をなんとか絞り出して返事をした。
「言っておくが、どれくらい本気なのか証明しろってんなら、お前を百万遍殺したところで足りねェからな。覚悟しろ……いや、後悔して死ね」





「……こういう時に言うセリフ教えましょうか?」
「ううん、別にいいよ」
「『お願い!私のために争わないで!』ですよ」
 いいって言ってんのにさぁ、と火縄の進言をため息で流してから、桜備は腕を組んだままゆっくりと天を仰いだ。空が青い。響く罵声も高く吸い込まれていく。この空が、そして世界全体が黒い炎に包まれた瞬間を、直前に絶命した桜備は知らない。自分の死が世界崩壊のトリガーになったという顛末を知ったのは再生した後になってだ。
「なんか平和って感じするなぁ」
 空に向かって呟いた桜備の独り言に、火縄が「まったくです」とこの男にしては珍しい、かすかに笑いを含んだ明るい声で応えた。


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OPはジョーカーがタバコふかしてるとこがかっこいいよねっていうラクガキ
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個人的桜備担No1~No3(順不同)
シンラ 火縄 ジョーカー
ジョーカーは一体いつから強火桜備担なんだ

ジョーカーは勝手にしやがれの「フィラメント」って曲が似合う気がする(歌詞
というか勝手にしやがれが似合う

SS

    
シンラクサカベは受け入れられない 1
エピローグ軸紅備、シンラ視点


 世界を創り直したからといって、その世界で生きる人間の意思まで操れるわけじゃない。特に、自分が誰に好きになられるか、誰を好きになるかなんていう感情の面は、むしろ前より一層不可解になった。
「はぁ~あ、シンラが無駄にモテるせいで俺らまでとばっちりだよ」
「悪……くはねェよ。俺だって、別にモテたくてモテてるわけじゃないから」
 再三繰り返されてきた要求を今回も俺が撥ねつけた後、インカはいつもの通りその場から姿をくらました。後に残されたモンスターは「本当に俺のこと好きなのか?」と疑いたくなるくらいには狂暴凶悪で、俺たちは文字通りに命からがらの討伐戦を終えたばかりだ。
 母親しかり、女性に振り回される人生なのは前の世から続く定めなのかもしれない。だからと言って、オグンに愚痴られるほどの責任は俺には無いだろ。
 先遣隊として送られたそのまま前線を任され奮闘したアーサー含む俺ら三人(とエクスカリバー)は、地べたに座り込んで水分を補給しながら、疲れたー疲れたー、と緊張感から解き放たれた反動で中身の無い意味のない文句を吐きながら休んでいた。
 少ししてようやく息が整い出した頃、オグンが「そういえば」と遅れて合流した陣営の方をチラリと横目で示した。
「あっちこっちでくっつきすぎっていえば、あの人らもだよな」
「え? 誰の話?」
 オグンの意図が分からない俺は、素直に訊き返した。視線を辿っていった二十メートルほど先には、情報端末を持ったヴァルカンを囲んで立つ桜備総隊長、火縄副指令、新門総指揮、紺炉総指揮補佐の、合わせて5人の姿があった。決まったパートナーがいる人間も含まれているが、そこら辺はあえて含みを持たせるような話題じゃない。
「だーかーら、総隊長と総指揮。あの二人付き合ってんだろ」
 完全に油断していた。
 訊き返したあと水筒に口をつけていた俺は、予想外の答えに驚き、含んでいた分の水を一気に噴き出した。ついでに気管にも入ってしまい全身でせき込んでいると、隣にいたアーサーが眉をひそめ俺との間の距離を広げた。
「おいシンラ、汚いぞ。水くらい溢さずに飲め」
「だっ、て、おいオグン、それ冗談だとしてもさすがに笑えねえって」
「冗談じゃなくて、マジのマジ。それに、俺よりもアーサーの方が先に気づいたぜ。なぁ、アーサー」
「見てれば分かるだろ」
「こいつの言うことは信用できねェ。なに、なんか証拠あんのかよ。ただの噂話だったら承知しねェぞ」
「いやいや、なんでシンラがそんなキレてんの? 普通にこえーんだけど……。うーん、証拠ってもなぁ……あ! 俺この前ふたりがキスしてんの見かけたわ。たまたまだけど、野営のテント裏で」
「動かぬ証拠すぎんだろぉ?!」
 どうか何もあってくれるな、むしろただの噂話であれ、という祈りも通じずにさっさと出てきたオグンの証言に、俺は思わず手にしていた水筒を潰しながら頭を抱えた。
「……わけ分かんねえ。なにがどうなってそうなってんだよ」
「さぁ…俺も詳しくは知らないけど。でも、この世界がどうなるかわからねェのに悩む時間がもったいねェってさっきシンラが自分で言ってたじゃんか。そういうことだろ?」
「いや、悩むだろそこは!!」
 前言撤回は男らしくないと分かりつつも、反射的にオグンの言葉に噛みついてしまった。オグンは俺のリアクションのデカさに体をのけ反らせて引いている。
 俺自身、脳みそん中が混乱しているのが自分でも分かった。ずしりと重たくなった頭を下げてう~んと唸りながら、恐る恐る、さっきオグンが見ていた方に目をやる。それでも直視はできなくて、視線はフラフラと“その辺り“をさ迷った。
 見るからに他の人の話を聞いていそうにない、どこか遠くを見ている新門総指揮の横顔。その左隣にいる桜備総隊長は、俺たちの居る位置からだと背中しか見えなかった。
 ずっと見てきた背中。背負うものが<8>から<DEATH>に変わっても出会った時からまったく変わらない、広くて大きい、憧れの背中だ。

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メモ

    
4/8 妄想
桜備大隊長は事後入念にストレッチしそう
ダメージを次の日に持ち越さない

+++
予定

いろんなタイミングで始まる紅備が脳内に同居してて、すごいハマりたての感

一番書きたいのは「出会ったその日の内にさっさと手を出す紅丸な原作沿いのごちゃごちゃ」なんですけど
5月末の炎炎WEBオンリーに参加するのでそこで出せたらいいな~という予定です

SS

    
桜々惚々α 事後電話



「あっ、若!やっと電話出てくれた。まだ屋敷ですかィ?みんな待ってますよ」
「あ~…もう行くから、待たせとけ。ちょうどよかった、紺炉、お前の着流し一枚貸りるぞ」
「は?? あぁ、桜備か。そっち探しに行ってくれたんですが、会えました?しかし、なんでまた?」
「あいつの服が破け…破いた……いや、破けた……?」
「?よく分からんですが、べつに構いませんよ。勝手に箪笥から持ってってください」
「それと、俺の部屋の柱が一本折れてっけど気にすんな。後で自分で直すから、とりあえずほっとけ」
「えぇぇ…なにしてんですかあんたら」

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SS

    
なれそめSS(桜を彫りたい紅丸の話)を直しつつまとめました

「桜々惚々」https://mites787.sakura.ne.jp/enen/tenji...

タイトルは恍々惚々のもじりです
R18パートもその内書きます

+++

支部にも呼び水投稿しました
備受け自体が少ないな?と薄々気づいてきたかも知れない

メモ

    
4/6 アニメ3期
EDがアナログ水墨原画アニメなの改めてものすごく良いな
横長で絵巻風なのもめっちゃ良い

SS

    
桜を彫りたい紅丸の話11
これで一旦おわりです


 先週まで雪が降っていたとは思えないあたたかい陽気が続き、東京でも桜の蕾が次々とほころび始めた。ずらり並んだ川沿いの桜も図ったかのように九分咲きとなった花見当日。桜備は、心地よい陽気のせいか人出も増えて賑わっている浅草町内を歩き回り、人を探していた。とはいえ、きょろきょろと酒屋や賭場の軒先に目を配りながらも足は検討のついている一か所へと真っ直ぐに向かっている。
 見慣れた暖簾を腕で押し、広々とした玄関に人の気配が無いのを確認すると、すぐに中庭へと回った。こちらも人の気配はないが、訓練のために広く空けられたスペースを囲むようにして植えられたたくさんの草木が風に揺れ、騒めきで桜備を迎え入れる。今日は白い雲ばかりが浮かぶ晴天だが、朝からずっと、湿気を含んだ生温かい南風が強く吹いている。
 強風に木々が騒めく音に混じって、桜備の頭上から低い声が振ってきた。
「よぉ」
 桜備程の体格があっても一抱えにするのは難しそうな太い桜の木。探されている男は、その桜の木が3つ股に分かれたうちの一本の枝の根元に腰かけていた。特段人の目から逃げていたつもりも無いのか、見つかっても特段あわてた様子はない。両足をブラブラと揺らしいつも通りの不機嫌そうな顔で地上を見下ろす紅丸の姿は、猿、もしくは天狗を思い起こさせた。
「あぁ、そんなところに。みんな探してますよ」
「…」
「体、元気になったみたいで良かったです」
「……」
「しかし、ここにも桜生えてたんですね。全然気づいてなかったなぁ」
「…………」
 目線は真っ直ぐに桜備を見下ろしているが、口はまったく開かない。桜備としてはほとんど道端の野良猫に話しかけるように気分で、呼びかけに返事がないのも気にせずに大きく声を張り続ける。
「桜といえば、タトゥーどこに入れるかっていうアレ。肩がいいんじゃないですか? 肩にタトゥー入れるのは<強さ>の象徴らしいですよ」
「……彫らねェよ」
「え?」
「俺ァ彫らねェんじゃなくて、彫れねェんだよ」
 ボソボソと呟いて最後、よっ、と言葉尻に合わせて勢いをつけ、枝から飛び上がる。妖怪か妖精のように見えても実際は人間だから、ふわりと柔らかく舞い降りるわけにはいかない。ドサッ、と数十キロの体が落ちた衝撃で、砂埃が舞う。紅丸が膝を伸ばして立ち上がる頃には、揺さぶられた枝から遅れて落ちてきた桜の花びらが二人の間をふわふわと舞っていた。
「この桜の木は、先代の先代が植えたもんらしい。ガキの頃は先代や紺炉に怒られそうになるとよくこの上に登って逃げた……すぐに叩き落されたけどな」
「だからか。多分ココじゃないかって教えてもらったんです。しかしそんな昔から……通りで立派な枝ぶりだ」
 腕を組み、長い年月をかけて成長しただろう太く高い桜の木を、感心した表情で見上げる。紅丸は桜の深い割れ目が無数に走る木の幹に背中を預けたまま、逸らされた太い首の中央を走る縫い目をジッと見つめていた。
「……昔、先代が色恋に関して俺に教えてくれたことってのがいっこだけあってな」
「へぇ。なんですか?」
「惚れた方が負けだ、だってよ。だから彫れねェ。認めることになる」
 片袖を抜いた右手が長い前髪をかき上げ、立てた指でぐしゃぐしゃと乱す。露わになったのは、眉根にきつく皺を寄せて桜備を睨みつける子供じみた悔しそうな顔で、感情表現としては言葉よりもよほど雄弁だった。
「勝つか負けるかってもんなら、俺が負けるわけにはいかねェだろ」
「でもその理屈でいったら、もう負けてませんかね?」
返事はない。代わりに、くるりと片足を軸に身を翻えし、桜の木に片手と額とを預けて寄りかかった。必然、桜備の方に背を向けることになり表情は読めなくなった。
「いいんですか、浅草の破壊王が負けっ放しで」
 あァ?と喉奥を擦るがなり声と共に顔だけ勢いよく振り返った紅丸に、桜備は特段怯むこともなく続ける。
「一回負けても、次で勝てばいいじゃないですか。前にそんな感じのこと言ってませんでした?」
「……それは博打の話だ。じゃあなんだ、次は何で勝ち負けつけりゃいいんだよ?」
 紅丸が不機嫌そうにな眉をいっそう歪め、挑発的に顎をしゃくる。それを受けて、桜備は顎を引いて一度目線を落としてから、伺うような視線を相手に投げ、声量をワントーン落として呟いた。
「……布団の中とか」
 当然、妙な間が生まれる。紅丸葉桜備の返事を聞いて思わず目を見開きかけたのをグッと堪えると、そのままさらに細め、嫌悪露わなうんざりとした顔をつくった。
「おい、なんだその犬のクソみてぇな誘い文句は」
「そこは別に、ただのクソでいいでしょ」
 妙な具合に歪んだ空気の中、桜の木から体を離した紅丸が、ザッザッ、と地下足袋で地面を蹴って桜備の目の前まで歩み寄る。ぶつかるまであと一歩のところで足を止めると、首をぐいっと上向きに逸らし、20cm上にある明らかに戸惑っている顔を見上げた。
「……ちょっとしゃがめ」
「へ?」
 グイ、とTシャツの襟首を掴んで引っ張る紅丸の手に対して、桜備はわずかに抵抗をしながらも腰を曲げた。抵抗したのは、起こり得る状況を咄嗟に予想したからだ。案の定顔の距離が一気に近くなり、紅丸の長い前髪が額に触れそうになったところで思わず固く目を瞑る。ただ、桜備の予想は外れ、顔がそれ以上に近づいてくることはなく、そして、予想していた顔ではなく頭に何かが触れる感覚があった。
「花ついてんぞ」
 二人の鼻先と鼻先の間に、紅丸が指先で摘まみとった桜の花びらを掲げた。目を開いた桜備は薄ピンク色の小さな花びらとその向こうにある紅丸のしたり顔のどちらにもうまくピントを合わせられずに、ぼんやりと状況を理解していった。
「あんたっ!……ん」
 揶揄われたのに気づき声を荒げようとした瞬間、熱くなった桜備に反して水が流れるように静かに紅丸の上体が動き、口で口を塞いだ。一度フェイントを掛けられたせいもあって、ただ唇の表面同士を触れ合わせるだけのキスでも、桜備の動揺は激しかった。ポロリ、と桜の花のひとつが枝を離れ、ヒラヒラと風に舞い地面に落ちるまで。その程度の時間だけ続いた柔らかい感触。その間ずっと瞬きもできないくらいに全身を硬直させていた桜備は、解放されるやいなや、屈めていた腰をさらに曲げてその場にうずくまった。
「もおぉぉ~~なんなんですかコレ」
 不満と動揺が混ざった唸り声をあげながら頭を股の間に入れ込むようにして小さくなり、首の裏まで真っ赤になっているのを隠すために両手で押さえる。紅丸は突っつかれたダンゴムシのように丸まった巨体を見下ろし、ハッと鼻で笑った。
「えらい初心だな。これなら余裕で勝てそうじゃねェか」
「別に、勝負もしてないし勝ちたいわけでもないし……」
「おら立て、部屋行くぞ。今なら花見の準備で連中みんな出払ってるから丁度良い」
「え、今って、今ですか?!」
「善は急げって言葉を知らねェのか。生娘じゃあるまいし心の準備なんて要らねェだろ」
 手首を掴んで歩き出した紅丸にひっぱられ、体勢を崩した桜備もつんのめりながらなんとか後に続く。
「ちょっ、でもっ、花見はいいんですか? みんな待ってますよ」
「どうせ夜中までやってんだ、後で顔出しゃいい。それに酒飲んで騒いでたら誰がいようがいまいが気にしちゃいねェよ」
 それはどうかなぁ、と疑問形の相槌を口の中で呟く桜備の脳裏には「早く戻ってくださいね」とBBQ用のトングをカチカチと鳴らしながら念を押してきた火縄の厳しい表情が浮かんでいた。
 靴を脱ぎ捨て縁側に上がり、庭に面した障子の開け放たれている一枚へと紅丸が迷いなく進む。起床して間もないのか、布団一式が人の抜け出たそのままの形で敷かれていた。二人よりも先に、強い風に乗って飛んできた桜の花がするりと和室の中に滑り込む。紅丸は5枚の花びらの形をきれいに保ったまま畳の上に落ちたそれを踵で踏みつけ中へと入ると、掴んだままだった桜備の手首を唐突に離し、自分より一回りは大きい体を軽々と蹴り飛ばし奥へと追いやった。布団の上に転がされた桜備は、咄嗟に受け身はとったものの尻餅をつき、衝撃に一瞬顔をしかめる。
「扱い、雑……っ」
 不満を訴えようと顔をあげ、目に入った光景に思わず息を呑む。薄暗い和室で仰ぎ見ると、外の光を背中から受けた紅丸の立ち姿は妙に大きく見えた。桜備を見下ろす左右非対称な瞳の赤色は、闇夜に点る非常灯のように煌々と輝いている。これは、危険を知らせる色だ。悩んでいてもしょうがない、いっそ一度壊してみてもいいかと、その判断は軽率だったかも知れない――
「今日は久しぶりにうまい酒が飲めそうだ」
 悠々と弧を描いた唇が溢した呟きを、いまだ強く吹いている風の音が掻き消す。紅丸が後ろ手に障子をゆっくりと閉め、昼の青空が隠れていく。細い隙間になり、そのまま完全に閉じ切るまで微かに見えていたその空には、今日の内にすべてを散り落とさんばかりの勢いで桜の雪が降っていた。




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桜を彫りたい紅丸の話10


 ビンッ、とレコードの針が飛んだ不快なノイズで、前日の紺炉との会話を振り返り隘路に行き詰まり掛けていた桜備の思考は途絶した。音が止まっても同じ速度で回り続けているレコードを止め、撥ね上がった針が曲がっていないかたしかめる。古いレコードの傷も原因だが、プレーヤー本体の調子も最近良くない。気分を変えるついでに修理を頼もうかと、同じ建物内にあるリヒトの研究室へと向かった。
「あれ、ヴァルカン?」
「あれ、総隊長? リヒトに用なら、トイレ行ってるだけだからすぐ戻るよ」
 目的の場所で思っていたのとは違う人物と顔を合わせ、お互いに軽い驚きの声をあげた。分野は微妙に違えど、職務上相談し合う機会も多い二人なので不思議はない。開発中の機械を弄っていた手を止めたヴァルカンを前にして、桜備は、ついつい目が行ってしまう綺麗に刈った頭や首、半袖のシャツから覗く二の腕に彫られたライン状のタトゥーを指差し尋ねた。
「そういや、ヴァルカンのタトゥーってなにか意味はあるのか?」
「意味? ま~無くはないけど、俺はどっちかっていうとファッション目的かな。なに、もしかして興味あんの?」
「興味ってほどでも……でも、ヴァルカンのタトゥーはかっこいいなとは前から思ってるよ」
「入れる時はあんま気にしてないけど、多少知ってはいるよ。たとえば、この二の腕のラインは戦士か、部族のリーダーとかが入れるやつ。あと、肩は強さの象徴とか……そうだ、シンラが入れた足首は<挑戦>かな。ただのファッションって言うには奥が深いよな」
「この腕のやつは、リサさんも同じの入れてなかったか?」
「あーそうだっけ? まあ、それこそそんな深い意味はないよ。リサが真似して入れたがっただけっつーか……」
 桜備の指摘に、ヴァルカンは頭を搔きながら目線を斜めに逸らし、ぎこちなくとぼけてみせる。その照れくさそうな顔を見て、桜備は口元を緩め無言で微笑んだ。
「そもそも、この辺のは元々俺が親父の真似して彫ったんだ。だから、家族の証みたいなもんかもな」
 ヴァルカンは、育ての親や肉親ではない、二番目の家族をつくったのが人並よりもかなり早い。その二人に注いできた愛情に嘘も裏もなく、だからこそ関係は障壁を乗り越え今なお円満に続いている。
 愛する人に真剣に向き合うという姿勢ではまちがいなく上級者だ。Dr.ジョヴァンニからリサを救い出したその時に傍らにいた桜備は、18歳の青年と思えないほどの愛の深さと覚悟を肌身で感じた。人を愛するのに、特別な技術はいらないし年齢も関係ない。たとえ老齢でも愛の深さも広さも知らない人間は世界が変わっても哀しいかな存在する。
「……ちょっと意地悪な質問だけど、リサさんに会ってどうしてすぐに家族として受け入れられたんだ? 全然知らない相手だろ?」
「理由かぁ。うーん、まあ事情を聞いて共感したのもあるけど……」
 顎に手を当てて悩み始めたヴァルカンは、さほど時間をかけずに答えにたどり着くと、ピン、と人差し指を立てて閃きを表現した。
「そもそも、俺がじいさんの孫、親父の子どもに生まれたのだってただの偶然だろ。でも2人が大切な家族なのは間違いない。ユウもリサも出会ったのは偶然で俺が選んだわけじゃないけど、お互い自然に助け合えたからそれで別にいいんだよ」
「そうか。一理あるな」
「それと、デカく意識が変わったのはジョヴァンニの件で壊れかかった後かな。機械はそもそも壊れないようにつくるのが一番だけど、人間関係はそう簡単にはいかないって俺も学んだし……。壊れるのは仕方ない。それを直したいって思えるかどうかが大事なんだと思うよ」
「なるほど。でも総隊長の場合むしろ壊すの専門の人が相手だから困っちゃいますね」
 ぬっ、といつのまにか部屋に戻っていたリヒトが二人の間に長身を割り込ませ、物知り顔で相槌を打つ。驚いた桜備は、あはははと暢気に笑うリヒトの白衣の襟を強引に引っ張り自らの傍に寄せた。
「なっ、んでお前が」
 動揺に肩を震わせ小声ながらも強い口調で詰問する桜備に対して、リヒトは顔色を変えずこともなげに返す。
「ジョーカーから聞きました。あの二人、いまだに結構仲いいんですよー。腐れ縁ってやつですね。あぁ、もちろんジョーカーは100%面白がってますけど、僕は真剣に応援してますよ」
「応援って……どっちのだ?」
「どっちでも。なにはともあれ平和に解決しますように、って。応援というよりは祈りですね」
 そう言うと、元の世界でも信心など持ち合わせていなかった男は、指先を合わせて祈りのポーズをとってみせた。横で二人の様子を見ていたヴァルカンは、仔細は分からないながらも雰囲気からあることに気づき、片方の眉を吊り上げ驚きの表情を浮かべた。
「え、もしかしてこれって総隊長の恋バナだったの? 俺、こういう勘が悪いんだよ」
「意外か?」
「そりゃ意外、いや、意外というか……なんだろうな。総隊長はみんなに愛されてるしみんなに平等に接してくれるじゃないすか。だからかな、誰かを特別扱いするっていうイメージがないんだ」
 自分の考えに納得して頷くヴァルカンの横で、リヒトもうんうんと顎を縦に揺らす。
「桜備総隊長は古のアドラー心理学でいうところの共同体感覚が非常に強い人ですからね。常人は諸々を飛び越えて社会や世界なんて曖昧なものを守るために命を懸けて戦ったりできません。だからヴァルカンくんのように身近な家族を大切にするところからスタートするのが普通です」
「俺にも育ての親はいるし、それこそ元第8のみんなも家族みたいなもんだぞ」
「それはもちろん。でも世界も変わったし、彼らも個としての幸せをドンドン追求してますからね。ちょうど子離れの時期なんじゃないですか?」
「おいおい、寂しいこと言うなよ」
「俺は総隊長のことずっと好きだけど……。でもなんであれ、総隊長が幸せになるってんなら誰も文句ないと思うよ」
「まあ、自分の好きにしたらいいってのは分かってるんだけどな……」
「現状の関係が居心地いいならなおさら、一度壊してみるのはアリな手かも知れませんよ。なにごとも試してみないと、待ってるだけじゃなんの結果も出ませんから」
「……リヒト、お前も応援してるんじゃなくて面白がってるよな?」
「ありゃっ、バレましたか」


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メモ

    
4/5 アニメ
え~~EDかっこよ

OPでチラホラ幻覚が見えるんですけど…カロンvs紅丸???

+++

EDの大隊長⇒中隊長⇒大隊長の流れが良すぎて延々見ちゃう
縄+備は原作でガッツリお出しされてるのであんま妄想はないけどもちろん好きです
縄×備でもいけるのかどうかが悩みどころだな…

    
バスケらくがき
桜備大隊長バスケやってるのがあまりにも似合う

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メモ

    
4/2 ミニアニメ
「日曜大工編」良いな~二人っぽいし好き
というかヴァルカンが好き
第8無能力者組らぶ

あのミニアニメ再掲ってことは1~2期放送中に流れてたってことですかね?
つまり3期の間もあるかもってこと??うおぉ…期待してしまう

SS

    
桜を彫りたい紅丸の話9



 休日の朝、ヴァルカンが以前に作ってくれたコーヒーメーカーが抽出してくれているのを待つ間に、桜備は一枚のレコードを探していた。
「お、あったあった」
 浅草で降る雪を眺めている時の会話に出てきた歌。棚の奥の方で埃を被っていたそのレコードは、桜備のコレクションの中でも他とは少し毛色が違っていた。ケースの埃を軽く落とし、円盤を取り出しプレーヤーにセットする。針を落とすと流れ出したのは、穏やかでゆったりとした旋律に、物悲しい歌詞。滅多に聞かないフォークソングも、少し肌寒い朝の空気に合っていて心地よかった。
 この歌で歌われている<東京>は自分が生まれた<東京>とも今住んでいる<東京>ともまったく違う世界だろうが、別れの切なさには共感できる。情緒など意に介さなそうだが、原国の文化が色濃く残る街で育った彼がどんな感想を持つのか興味があった。
 元第七のあの屋敷にレコードプレーヤーなんてありそうにないから、この部屋まで来てもらうのが手っ取り早いかも知れないな。たわむれな思いつきがレコードと一緒に頭の中を回る。
 たとえば、シンラやアーサーは桜備から見れば子どもか弟のようなものだ。部下でありヒーローであり神であり、一言では表せない複雑さはあれど、どちらかと言えば肉親に近い関係なのは間違いない。紅丸も年齢で言えばシンラ達に近いが、出会った当初から立場は対等で、子ども扱いが失礼になるほどに強靭さも背負うものの大きさも過剰だった。お互いに違う正義を生きているのは明白でも、肩を並べ手を取り合うに足る存在。中途半端だが、だからこそ稀有ではある。
 それが恋だと、まさか愛だと。
 疑いを捨て素直に向き合うのがこんなにも難しい事案は今までにあっただろうか。相手の気持ちも自分の気持ちも、どちらも易々とは信じられない。とはいえ、ないがしろにするつもりもないが――



「これ、お見舞いのメロンです。本人はいらないからヒカゲとヒナタにあげてくれって」
 紅丸の部屋を出た桜備は、土間にある台所で夕飯の支度をしている紺炉を見つけ、声をかけた。紺炉は包丁を動かしていた手を止め、笑顔で面を上げた。
「おぉ、悪いな折角持ってきてくれたのに。若もスイカは好きだよ。ウチの畑でも育ててるし。それに若の手刀スイカ割りは芸術だからなァ。夏になったら見に来るといい」
「芸術的スイカ割り……」
 想像し難しい言葉を反復し、首をひねる。その顔を見ていて何かに気がついた紺炉は、怪訝そうに眉をひそめた。
「おいおい総隊長、若に熱うつされたか? 顔真っ赤だぞ」
「もーそれ分かって言ってるでしょ? 人が悪いな……」
「ハハ、まぁな。でも、分かってんのにはぐらかすのだって良かァないだろ」
「っそんなつもりは……」
 ない、とも言い切れないせいで、嘘がつくのが得意ではない桜備の言葉尻はあからさまに濁る。その様子を見ていた紺炉は、ふぅ、と鼻から息を抜いてから眉尻を下げて微笑んだ。
「そっちの立場からすると突拍子もない傍惚れに思えるかも知れないけど、若もこういう勘に関しては悪くないんだ。ケツの青いガキの酔狂とも言い切れない」
「はぁ」
 桜備は曖昧な相槌を打ちながら、紺炉が伸ばしてきた手にメロンを渡した。
「俺もいまさらあんたのことを疑っちゃぁいないが、ああ見えて意気地がないし、意外に打たれ弱いところもあってね。ひどい女に遊ばれて捨てられるくらいならまだ慰めようもあるが、相手が桜備じゃ俺の手に負えそうにない。他にもっといい男はいる、なんて簡単には言えねェしな」
 受け取ったメロンを両手の中で転がして品定めながらそう言い、最後に困ったように微笑み肩をすくめる。
「しかしどうにも、腑に落ちないと言いますか。その……なんというか、モテるでしょう、新門総指揮は」
「そりゃあもう、女にも、それこそ男にもモテるよ。袖にされて泣いたり狂ったりしてる奴も数えきれないくらい見てきたが……まあ、そいつらの中に脳天ぶっ叩いて血ィ出させるようなのはいなかったのはたしかだ」
「その節は、ご迷惑をおかけしました」
「いや、むしろありがたかった。アレも若が頭んなる覚悟決めた切欠のひとつだ。まぁ…それ以上に妙な拗らせ方しちまったみたいだが……下手に口出す気はねェけど、嫌でも目に入っちまうからなぁ。俺としては、若が楽しそうならそれでいいよ」
 落ちくぼんだ眼窩の奧の目が、じっと桜備の顔を見つめる。微笑みの浮かんだ口元に比べると、眼光は冷たく鋭い。いまだ顔の中央に残る一文字の聖痕は一切歪んでいない。
「紅のこと、よろしく頼むな……盃を交わしているとは言え、万が一不義理で頭の面子を潰されるようなことになりゃ、こっちも黙ってるわけにいかないんでね」
 丹念に研がれた出刃包丁を握っていた紺炉の右手に力が込もり、ストン、と頭ほどもある大きなメロンを軽々と断つ。真っ二つに割れたメロンの片割れがゴロリとまな板の上を転がり、無数の種が並ぶむき出しのオレンジ色の中身が、新鮮な果汁を滴り落としながら桜備の方を向いた。
 そこんとこよろしく、と念を押す紺炉の声が暗い土間を這う。桜備はすぐには頷けずに、ゴクリと口内に溜まった唾を呑むにとどめた。


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乾杯
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