ツキハヒガシニ

    

メモ

    
3/19 出ない
スキルカードが出ません

アニメ3期のOP(女王蜂)もED(UC)も楽しみ
初回放送の翌日はUCの某メンバーのライブ行きます

    
初描きべにき

20250319153756-admin.jpg

気づき:左目がしいたけっぽい

SS

    
桜を彫りたい紅丸の話6



「なにが思い過ごしなんですか」
 独り言のつもりで呟いた紺炉は、ふいに話しかけられて、ギョッと驚き眉を吊り上げた。
「驚いた。いたのかい」
「通りがかったんです。総隊長に用があるので」
 いつの間にか横にいた火縄は、いつも通りの淡々とした口調で答えながら、紺炉の背中のすぐ後ろにある扉を人差し指で指し示した。
「今日はどうなさったんですか?」
「ああ、ちょっとばかしお礼と、あと花見の相談を」
「まだ正月も過ぎたばっかりだっていうのに、浅草の人は気が早いですね」
 皮肉というより、本気で感心している様子で火縄が驚く。眼光鋭く言葉に棘はあるものの、真面目な男だ。
「そういや子供が産まれるんだって? めでてェこった」
「無事に産まれるまではめでたくもなんともありません。死がフワッフワに軽くなったこの世界で、生の重みは余計増していると考えていますから」
 表情を変えずに言い切り、クイ、と眼鏡のフレームを指で押し上げる。少し俯いた顔の眼光が幾分落ち着き、わずかに不安までもが滲んでいるのが紺炉からすると意外だった。
「総隊長とはお話を?」
「まあ、ほんの数分ってとこだが」
「……紺炉指揮官補佐から見て、総隊長に何か変わった様子はありませんか?」
 火縄のその質問に引っかかりを覚えた紺炉は、思わず首を捻った。奇しくもついさっき自分が桜備に尋ねたのとほとんど同じ質問だったからだ。
「何か、ってェと……」
「特に無ければ構いません。忘れてください」
 言い淀む紺炉を待たず早々に切り捨てる。まるで自分の質問が失言だったとすぐに気づいたかのような火縄の様子に、ますます疑念が募る。
「……お互い、頭がジッとしてられる性質(たち)じゃないから苦労するな。世界はすっかり変わったってのに、あの人らはまるで変わりやしねェで、こっちが思いも寄らないことばっかり考えつきやがる」
「……全くです」
「……お前さん的にはいいのかい?」
 紺炉が探り探りに投げた質問に対して、火縄は頬も眉もピクリとも動かさないまま、素早いまばたきを数度繰り返した。まるで、人間の及ばない素早さで結果を求めているこんぴゅうたあのようだ。妙な状況に陥って、答えを待つ紺炉の額には冷や汗が伝っていた。
 数秒後、火縄は計算の終わりを示すかのように眼鏡のフレームを押し上げてから口を開いた。
「あの二人は今やほとんど神に匹敵する力があります。つまり、喧嘩にでもなれば世界の半分くらいは滅んでも不思議じゃない。仲が良いのに越したことはないでしょう」
 予想外の答えに呆気に取られた紺炉は、一瞬息を呑んでからすぐに我に返り、ワハハハと声に出して豪快に笑った。
「ちげェねェな! 犬も喰わねえような喧嘩だけは勘弁してほしいところだ」
 それから「あんたも花見絶対来いよ」と言い置き、笑顔を浮かべたまま廊下を玄関に向かって歩きだした。



畳む

SS

    
桜を彫りたい紅丸の話5


 その日紺炉は、町の破壊を手伝ってもらった礼とは別に、ひとつの提案を携えて元第8特殊消防隊詰所・現世界英雄隊本部を訪れた。
「部隊合同での花見か、いいですね。折角だから送別会も兼ねて、集まれそうな人みんなに声をかけましょう」
「送別会ということは、誰か離職を?」
「ああ、退職ではないんですがマキ中隊長が来月から産休に入るんですよ。無事に産まれたら火縄も育休を取るし、しばらくの間は寂しくなりそうです」
 目を細め朗らかに笑う顔は、まるで自分自身が父親になるかのように嬉しそうだった。(元)第8は隊というより家族みたいなものなのだと、そう言っていたのは修行に訪れたシンラだっただろうか。
「先日は若の酔狂にも付き合ってもらっちまって……随分派手に暴れてたけど、体は平気か?」
「全然! 賑やかなのは好きだし、良いトレーニングにもなりました。宴会までは残れなくて残念だったんで、今度の花見で雪辱を果たすつもりです。--案件としては、こんなもんですかね?」
「じゃあー、ついでにウチのしょうもない相談でも聞いてもらおうか。実は若が……」
「また何かしたんですか?」
「墨、じゃなくて……たとぅーを入れるって言い出して」
「うわっ、あの時のシンラを思い出す…! 男の子って、やっぱ一度はそういう時が来るんですかね」
「男の"子"といえる年でもないってのに」
「でも、浅草の原国式のタトゥーは粋でかっこいいじゃないですか。シンラの場合は人格もおかしくなっちゃったからイメージ悪いけど、タトゥー入れるだけだったら特段たいした問題にもならなかったかと」
 説明と共にそう遠くはない記憶に思いを巡らせているのか、口の間から乾いた笑いを漏らしつつ、視線を斜め右にさ迷わせる。桜備の珍しい表情を見た紺炉も、浅草に第8が秘密基地を構えていた時に垣間見たシンラの”反抗期”をぼんやりと思い出す。
「悪いこたァないが、なにやら変な感じでね。総隊長から見て、最近若…いや、紅のことで、何か気になる節はねェかな」
「気になる?」
 気になることねえ…と、縫い目のある首を見てる方が不安を覚えるほどにまで傾け考えていた桜備だったが、突然すっ、と執務机の大きな席から無言で立ちあがったと思いきや、そのまま紺炉のすぐ横にまで歩み寄ってきた。ふいの行動と詰められた距離にぎょっとした紺炉の体が、反射的に軽く強張る。
「ほら、俺たち丁度身長同じくらいでしょ。だから分かってくれるんじゃないかと思うんですけど、見上げられると照れませんか?」
「照れる?」
「こう、横並びで立ってる時なんかに、こっちを見上げてくる顔が妙に幼く見えて。酒に酔った時の笑顔もそうだけど、あんな顔されると、ちょっと調子狂いますね」
 頬を指先で掻きながら照れ笑いを浮かべる桜備の細まった目。本人が言う通り紺炉の目線とほぼ同じ高さだった。その目からそろりと視線を逸らし、いつも紅丸の顔がある辺りにさ迷わせる。
 あんな顔、と言われても、どんな顔か分からない。
 おい紺炉、と見上げてくる紅丸を思い浮かべてみたが、それは勝気で不遜で、ある意味愛おしいくらいの生意気さに満ちている。照れるようなもんじゃない。幼い頃からよくよく知っているつもりだが、それだって今の紅丸の全てとは言い難いことを思い知らされた気がした。
「すいません。俺が言いたいのは、とどのつまり気になることはないってことです。これまでの働きにも、文句のつけようがない。この国、いや、この世界にとってお二人とも代えがたい存在です。頼りにしてます!」
 距離が近いまま真剣な面持ちで言い連ねる桜備からこの男特有の妙な圧を受け、耐えきれなくなった紺炉は思わず一歩二歩と後ずさる。
 そういう話ではないのだけど、と返すべきか数秒ほど逡巡し、止める。
「そりゃ、ありがたい……若にも伝えとくよ」
 情人云々と、紅丸より先にこちらにカマをかけなくて良かった。いや、たとえ投げかけたとしても、元より紺炉の意図などサッパリ伝わりそうにない。
 紅丸の真意の程は測りかねるが、たとえどう転んだとしても、大地に根を張る巨木のようなこの男はビクともしないだろう。
 じゃあまた、とそそくさとその場を後にした紺炉は、廊下に出てからほぉ、とため息を吐いた。まるで自らがスッパリと振られたような気分になり、かえって溜飲が下がるのを感じていた。
「早とちりで、思い過ごしか。紅のこととなると心配が先立っちまってなさけねェな」
 


畳む

メモ

    
3/17 読み返しながら巻数・話数をメモってる
最後まで読んでから5~6巻辺りを読み返すと
この頃の紅丸やたら細っ白いし自信無いしでかわいい めっちゃ攻め

エピローグでは立場が上下になるけど桜備は紅丸に対して敬語のままなのかタメ口になるのか問題
結論出さずにどっちも妄想したい
42話の喧嘩で口調が荒くなるけどギリ敬語残ってるの好き…大好き

SS

    
桜を彫りたい紅丸の話4


 桜を好きなのに嘘はない。
 パッと咲いてパッと散る。その潔さが好きだ。そもそも、浅草の人間で桜が嫌いな奴は居ねェ。酒と一緒ならなおのこと。
 嘘は、ない。ただ、好きになる切欠があの男だったと、その事実は伏せた。
 きっとあの男の死に際も桜のごとく、花の色が鮮やかなうちにパッと散るのだろう。枯れる姿も萎びる姿も想像できない。人ひとりの身に余る精魂と気力に満ちた器の持ち主だ。
 先代に連れてってもらった荒川での花見。視界一面の桜の海と風が吹くたびに起こる豪快な桜吹雪に胸を躍らせた。
 俺ァ、あの時から桜が好きだ。ただ、いつの間にやらすっかり忘れていたその感覚を思い出させたのはあの男だった。名前に負けぬ気風の良さで、嵐にも折れぬ太い芯を備えた、あの男。
 恋など知らぬ、愛などましてや。
 心躍る。退屈しない。安心もすれば、畏怖も覚える。
 俺ぁどうやら、あの男がいたく気に入っちまっている。
 ただそれだけだ。

畳む

SS

    
桜を彫りたい紅丸の話3


 弔い酒の宴席も佳境に入る中、一刻前にさりげなく席を外した紅丸を目の端で捉えていた紺炉は、後を追って縁側に出た。ほどなく、ひとけのない部屋の襖に背中を預けて夜風を浴びている男の影を見つけた。話すなら今がいいか。ちょうどよく生まれた機会を生かそうと、隣に腰かけ、彫師の熊五郎から聞かされた話を切り出した。
「墨ィ? ああ、そんな話もしたかもな。なんだ、手前は入れてんのに俺がすんのは反対か?」
「別に構いやしねえよ。ただ、情人の名前から取ってくるなんてのはバツが悪い。大抵の奴は、後々関係が変わった時に後悔してるぜ。まあ酒の席での笑い話にはなるが……」
「じょっ…! 紺炉、おめえ馬鹿言ってんじゃねェよ! 誰の何の話だ?!」
 滔々と説き伏せる紺炉の言葉を聞きながら肩を震わせていた紅丸が、遂に耐えかね声を荒げて遮る。赤くなった顔からは、動揺のせいか酔った時に見せる笑顔も消えていた。
「え? 違うのか?」
「違ェ。一体どういう勘違いだそりゃ」
「いやだって、紅……」
 はぐらかされているのか、と一旦は思うも、新門紅丸はそんな器用な真似ができる男ではないと思い直す。そうなると、動揺するのは紺炉の方だった。
「じゃあなんだ、頻繁に顔見せるし、二人で若の部屋にしけ込むだろ。あれはなんだ」
「しけ込むたぁ、人聞きが悪ィ。酒飲んで話してるだけだ。ここに客人が多いのは昔っからだろ」
 紅丸の言い訳染みた返答も、引き下がる理由にはならなかった。追い詰めて良いものなら言いたい。じゃあなんだ、あの男に対しての馴れた野良猫のような態度はなんだ。無茶も諾々と受け入れる柄にもない寛容さはなんだ。今日の昼間に見せた、あの惚けた顔はなんだ。そもそも、俺は誰のことともはっきり言っていないのに、当然の心当たりがあるかのように話を進めているのはなんでだ。
 詰問する材料ならある。だが、今ここで追い詰めても益は無い。本人に自覚がないのならなおのこと。
「悪いな、俺の勘違いだ」
「えらい早とちりだな。そもそも墨彫ろうってのも、風呂屋で熊と一緒んなったから訊いてみただけだ。本気で入れるつもりはねェよ」
「……なら最後にいっこだけ。なんで桜だ。そんなに好きだったか?桜」
「酒を飲む理由になるからな。自分の腕で花見酒なんてのも悪くねェだろ」
 傍らに置いていた盃を手に取り、口へと運ぶ。その顔には、いつも通りの愉快な笑みが戻ってきている。
 俺にもくれ、と横から飲みかけの盃を奪い取り、残りを一気に煽る。喉、次いで胃がかっと熱くなり、頭の裏、襟足辺りがジンと柔らかく痺れる。うまい酒だ。文句を垂れる紅丸に盃を返してから、はあ、と酒臭くなった息を吐き、目の前の薄暗闇に目を向けた。縁側から見える屋敷の庭の隅には、まだ蕾もついていない桜の巨木が生えている。障子の漏れ明かりに照らされる裸の太い幹の影は、どこかあの男に似ていた。

畳む
    

or 管理画面へ