SS 桜を彫りたい紅丸の話2 続きを読む 「おう、紺炉」 紺炉が紅丸を見つけたのは、町で一番高い物見櫓の上だった。人体発火現象が無くなり火消しの出番は大きく減ったものの、通常の火事は起こる。特に、木造家屋が多い浅草は一度火が出れば延焼しやすいのも変わらない。 「今日はえらい良い陽気ですね。富士も見えそうだ」 紺炉はそう言いながら、紅丸が寄りかかっている手すりに両手を掛け、ぐっと身を乗り出しあたりを見渡した。 大災害と再生を経た世界にあっても、浅草の町並みは結局ほとんど変わらなかった。世界を作り直した森羅が常から浅草を<楽しい町>と感じていたのを思えば不思議はない。 「なんか用か。今日は俺ァ非番のはずなんだが」 「邪魔してすいやせん。しかし、若が博打にも行ってねェとなるとこりゃにわか雨になるか。先代は今日も船橋ですよ。生き返ったと思ったら、悪い遊びを覚えっちまったなァ」 苦笑いを浮かべ、競馬場のある東の方角に目を向ける。千里眼などはなくても、財布をスッカラカンにして地団太を踏んでいるだろう姿が目に浮かぶ。親子そろって博打の勘が悪いんだからなさけねぇ。 「たまにはな。しかし、そう皮肉を言われると賭場の空気が恋しくなってきた。暇ならこの後付き合ってくれよ」 「いいんですか? 若が勝てなくなっても」 「言ってろ」 紺炉の忠告を紅丸が鼻で笑い飛ばす。根拠の無い自信にあふれた笑みが、一刻後には悔しさで歪むのだと思えば紺炉も思わず微笑んでしまう。 「そうい――」 「そういや、明日は朝から弔いだ。三丁目の与太ジジイが病気だったろ? 昨日が峠だったらしい。……わりィ、今なんか言おうとしてたか?」 「や、お構いなく。しかしそうか、死に目にはあえませんでしたね」 「しようがねえだろ、遠征中だったんだ。それに、百もすぎての文句つけらんねェ大往生だぞ。まっ、弔いだけはパーっと派手にやってやろうぜ」 両手でつくった拳を顔の横あたりまで持ち上げ素早くパッと開く。花火の手真似してみせる紅丸の表情や声には、どこか浮ついた様子が滲んでいる。 「その下調べするために、こんなとこ来てたんですか。抜け目がねェ」 人体発火現象がなくなり浅草の破壊王も出番は終わりかと思いきや、そうは問屋が卸さなかった。自然死や事故死であっても”浅草式”もとい”第七式”の弔いをやってほしい、という町民が後を絶たなかったのだ。無論、弔われる本人や家族の意思とは別に、たまのお祭り騒ぎを期待しているだけの者も多い。 「あの辺は新築も多いからなァ、家ひっくり返すにも骨が折れそうだ。先代と、桜備あたりにも手伝わせるか」 話題になっている家の辺りを指差して町を示す。突如出された名前も相まって、その横顔の笑みも紺炉の目には意味深に映る。 「……先代はやめてやってください。老体に無理させると、今度はまたあっちがおっ死んじまう」 「そりゃいいじゃねェか。一石二鳥ってやつだ」 紺炉は縁起でもないことをいう紅丸に眉をひそめ、一段低いところにある頭を手の甲で軽く小突いた。 畳む 2025/03/16
メモ 3/16 キャラクターブックも読んだ 作者インタビューの「対になってる」発言に慄きのたうち回る 公式の破壊力すごい 桜備の家族は気になってたのでその辺も触れられててよかったです 健全な家庭で健全に魂を強くした男尊い 原作で拉致と縛り上げがある大隊長はもっと受けていいのでは 2025/03/16
SS 桜を彫りたい紅丸の話1 続きを読む 「なぁ、紅丸ちゃんグレちまったのかい?」 そう紺炉に尋ねてきたのは、彫師として浅草で長年腕を振るっている熊五郎という男だ。先代の墨も手掛けていて紺炉よりも二回りは年嵩で、顔には墨ではなく皺が深く刻まれている。彼に限らず、元第七特殊消防隊の詰所、現世界英雄隊浅草支部の玄関前で日課の掃き掃除をする紺炉に声を掛けていく町民は少なくない。ただの挨拶や喧嘩の仲裁願い、噂話の吹き込みなど……話題はさまざまだ。 「まさか若がまた何かしでかしたか」 これまた頻繁に出てくるのが主でもある紅丸の話だが、ここに関しては良い話と悪い話は五分五分といったところ。今回は悪い話か。心配そうな顔で投げ掛けられた質問に、紺炉がとっさに姿勢を正して訊き返すと、彫師の爺は、ちがうちがうと風呂敷包みを下げた右手とは逆の手を顔の前でヒラヒラと振った。 「墨を入れたいんだと」 「墨ィ?」 「変だろ。今までこれっぽっちも興味なかったってのによ。なんか悪いもんでも喰ったんじゃねェか?」 首を傾げる男に同調して、どうしたんでしょうねえ、と返しながらも、紺炉の内心では思い当たる節があった。 そういえば、第八の森羅は『どっぺるげんがー』の影響で別人になっている間に、本人のあずかり知らぬところで全身墨だらけになっていたと聞く。大災害も解決した今、まさか紅丸のどっぺるげんがーが現れたとは考えにくい、が。 「ちなみに……」 根拠のない心あたりを確証に変えるのは気が引けた。だが、確証に変えてしまえば些事として片づけられる。 「その……どんな柄を入れたいかなんて話もしたのかい?」 「ああ聞いたよ。花だってさ。桜だ。どうせなら龍でも鳳凰でも入れたら似合うってのに」 「……そうか」 「一度彫っちまったら消すんも大事だ。お前さんに一回相談してみたらどうだーって、そう言ったら、ガキ扱いすんじゃねえって拗ねられちまってね。詫び代わりに、ホラこれ、ウチのばあさんが作った饅頭」 「余計ガキ扱いされたって怒るんじゃないか?」 「ちげえねえ」 用を足し終えた男は、ワハハ、と豪快な笑い声をあげながら去っていく。それを笑顔で見送ること数秒、男の背中が米粒ほどになったところで、紺炉は真顔に戻り湿っぽいため息を吐いた。 さて、どうしたもんか。 畳む 2025/03/15
【ハマりたて初期衝動跡地】 2025/03~2025/08 2025年春に突然炎炎と紅備にハマり、いてもたってもいられず諸々書き散らすために作った雑記帳です。 アニメ3期開始前の変な時期にハマったにも関わらず、運が良かったり優しい人達に巡り会えたりのおかげで楽しい数ヶ月でした。ので所々(というか常に)テンションが変です。 絵の名義を分けようと思い立ったため現在は稼働していません。 もし紅備好きな人がいたとして、他にも好きな人いるんだなと感じられるならもうなんでも嬉しいかもと思いとっておいてます。 --- (当初からの注意書き) 炎炎ノ消防隊の紅丸×桜備に可能性を感じてしまった人の呻き場 ここにあるのは:ハマりたて人(びと)の荒れた呟き/二次創作(紅備腐SS、らくがきなど) SSはSS一覧に移しています 2025年3月に原作一気読みアニメ一気見したド新規です ネタバレ配慮無しなのでアニメ派注意 2025/03/15
メモ 3/15 原作最終巻まで読了 これは絶対に紅丸×桜備しかないと決意を固くする CP表記はpixivに投稿してくれてる尊き先人にならいます 炎炎炎舞で二人のスキルカード配布?!タイミングが怖い スマホゲームはすぐ飽きてやらなくなると分かりつつも抗えずDL とりあえず桜備+リヒトは引きました さらにタイミング良いことに5月に炎炎Webオンリーがある?!! これはもう参加するしか!と息巻くも一旦ステイ… とりあえず妄想吐き出し用として個人サイトの別館てがろぐ設置 2025/03/15
「おう、紺炉」
紺炉が紅丸を見つけたのは、町で一番高い物見櫓の上だった。人体発火現象が無くなり火消しの出番は大きく減ったものの、通常の火事は起こる。特に、木造家屋が多い浅草は一度火が出れば延焼しやすいのも変わらない。
「今日はえらい良い陽気ですね。富士も見えそうだ」
紺炉はそう言いながら、紅丸が寄りかかっている手すりに両手を掛け、ぐっと身を乗り出しあたりを見渡した。
大災害と再生を経た世界にあっても、浅草の町並みは結局ほとんど変わらなかった。世界を作り直した森羅が常から浅草を<楽しい町>と感じていたのを思えば不思議はない。
「なんか用か。今日は俺ァ非番のはずなんだが」
「邪魔してすいやせん。しかし、若が博打にも行ってねェとなるとこりゃにわか雨になるか。先代は今日も船橋ですよ。生き返ったと思ったら、悪い遊びを覚えっちまったなァ」
苦笑いを浮かべ、競馬場のある東の方角に目を向ける。千里眼などはなくても、財布をスッカラカンにして地団太を踏んでいるだろう姿が目に浮かぶ。親子そろって博打の勘が悪いんだからなさけねぇ。
「たまにはな。しかし、そう皮肉を言われると賭場の空気が恋しくなってきた。暇ならこの後付き合ってくれよ」
「いいんですか? 若が勝てなくなっても」
「言ってろ」
紺炉の忠告を紅丸が鼻で笑い飛ばす。根拠の無い自信にあふれた笑みが、一刻後には悔しさで歪むのだと思えば紺炉も思わず微笑んでしまう。
「そうい――」
「そういや、明日は朝から弔いだ。三丁目の与太ジジイが病気だったろ? 昨日が峠だったらしい。……わりィ、今なんか言おうとしてたか?」
「や、お構いなく。しかしそうか、死に目にはあえませんでしたね」
「しようがねえだろ、遠征中だったんだ。それに、百もすぎての文句つけらんねェ大往生だぞ。まっ、弔いだけはパーっと派手にやってやろうぜ」
両手でつくった拳を顔の横あたりまで持ち上げ素早くパッと開く。花火の手真似してみせる紅丸の表情や声には、どこか浮ついた様子が滲んでいる。
「その下調べするために、こんなとこ来てたんですか。抜け目がねェ」
人体発火現象がなくなり浅草の破壊王も出番は終わりかと思いきや、そうは問屋が卸さなかった。自然死や事故死であっても”浅草式”もとい”第七式”の弔いをやってほしい、という町民が後を絶たなかったのだ。無論、弔われる本人や家族の意思とは別に、たまのお祭り騒ぎを期待しているだけの者も多い。
「あの辺は新築も多いからなァ、家ひっくり返すにも骨が折れそうだ。先代と、桜備あたりにも手伝わせるか」
話題になっている家の辺りを指差して町を示す。突如出された名前も相まって、その横顔の笑みも紺炉の目には意味深に映る。
「……先代はやめてやってください。老体に無理させると、今度はまたあっちがおっ死んじまう」
「そりゃいいじゃねェか。一石二鳥ってやつだ」
紺炉は縁起でもないことをいう紅丸に眉をひそめ、一段低いところにある頭を手の甲で軽く小突いた。
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