おくりもの

「ホークス、おはよう。Mt.レディから花束届いとったよ」
 事務所へと入って来たホークスに、サイドキックがすかさず部屋の中央にあるテーブルの上を指し示す。
「多分、この前発表された去年度のビルボードチャートの結果を受けて。一緒にメッセージカードも付いとったから……『18位おめでとう』って。18位に10本くらい下線引いてある」
「あ~あ、それは完全に嫌味っスわ。お返しにおいしい羊羹でも送りつけといてください」
 メッセージの内容を聞いたホークスは、渋い表情で季節の花の豪華なアレンジメントを一瞥すると、そのままテーブルを素通りし、部屋の隅に設置された給湯コーナーへと向かう。
「こっちはチャートなんて気にしてないっつーのに。トップ10に入れたのよっぽど嬉しかったんだね」
 先にそこでお茶を淹れていた常闇の隣に並んだホークスは、そうぼやきながらインスタントコーヒーを淹れ始めた。
 して、俺はそれになんと返すべきか。と応えあぐねる常闇は、ふと別のことを思い出し、コーヒーの蓋を開けようとしていたホークスの手を止めた。
「良かったら、これをどうぞ」
「なにこれ?紅茶?」
 ホークスは、渡されたティーバッグの個包装の花柄を、裏に表にと不思議そうに眺めている。
「先日雄英の同窓会があって、その時に八百万……クリエティからもらったものです。量が多かったので、事務所用にちょうど良いかと」
「あ~、同窓会。キミたち、ほんと仲良いね。いいこといいこと。同世代の情報収集にもなるし」
「そういえば、レディの事務所でサイドキックをやっている者もいる。……ブラック過ぎて辞めたいと漏らしていた」
「マジで?!ははっ、シワ寄せきてんのか」
「恐らく」
「良かったね常闇くん、うちの事務所はホワイトで。そもそもこっちは2人体制でやってるんだから、1人あたりの成果が少なくなるのは当たり前だし。つーか、ツクヨミがレディよりも上のランクにいるんだから、うちの事務所的には勝ちだよね?あ、そうだそうだ。羊羹、ツクヨミの名前で送っといてー」
 背後を振り返り、嬉々とした声でサイドキックに向かって叫ぶ。
 そこまでは軽快にしゃべっていたはずのホークスだったが、姿勢を戻した途端に、神妙な顔で黙り込み手元のティーバッグをじっと見つめ始めた。
「……別のフレーバーも選べるが」
「いや、こだわりないからこれでいいんだけど……」
「なにか?」
「……ヤオヨロズさんって、あのおっぱいおっきい子だよね」
「っな!!! いや、彼女のあれは個性の特性上脂肪が多く必要なだけであって、つまりあれも個性の一部というか」
「あっはっは、すげー動揺するじゃん」
 ホークスがそう言ってケラケラと笑い出したところで、からかわれたのだと察する。が、すでに誤魔化しようもないくらい慌てふためいた後では反論もできぬ。顔も熱い。不覚だった。
「じゃ、今日も一日がんばりましょうっ」
 いつの間にか紅茶を淹れ終えていたホークスは、マグカップを片手に自分のデスクへとさっさと去って行った。残された常闇は、抽出しすぎてしまった紅茶のティーバックを捨て、その場で一度カップに口をつけた。
 贈り主にふさわしい高貴な香りと共に、温かい湯気がホワンと顔を包む。その瞬間、間違いなく柔らかいだろう豊満な胸の谷間を想起してしまったのは、さっきの今だ。許してほしい。


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