触れ合う
互いに下半身の下着だけの姿になりベッドの上で向かいあって数分、先に動いたのはホークスだった。
顔を下から掬い上げるよう動かし、常闇の口にキスをする。常闇は、閉じられた瞼の縁で跳ねる睫毛をじっと見つめていた。
ホークスにとっては、人生で二回目のキスだ。そう思うと、常闇にも感慨深いものがあった。だが、そんなにしみじみと思い入る余裕もなく、一度触れて離れたホークスの口が、はあ、と吐息を漏らした瞬間を狙いすかさず舌を差し入れる。
「ん、ぐ……っは、ぁ」
互いの唾液が混ざる音に、腹の底が疼いた。並よりも長い舌を駆使して口内を擽ると、その動きに反応してホークスの体が逐一跳ねる。その動きを抑えようと、肩に縋りついているホークスの二の腕を常闇の手が掴んだ。
触れた瞬間から、もう離しがたい。
掴んだホークスの二の腕は、緊張で強張ってはいても逃げ出そうとはしていない。それに内心で安堵しながらも、無駄なく整えられた筋肉のハリに、思わず掴んだ手を上下に動かして撫でさすっていた。
摩られるむず痒さのせいか徐々に力が抜けていくと、その肉は想像以上に柔らかな感触へと変質していった。それは二の腕だけでなく、肩も、胸部も腰回りも。筋肉を纏ったパーツのどこかしこもがそうだった。贅肉があるはずもないのに、こんなに柔らかくて人として大丈夫だろうか。やわらかい。マシュマロだ。ビーズクッションだ。低反発枕だ。動揺のあまり発想が貧弱にならざるを得ないほど、初めて触れるホークスの素肌の質感に衝撃を受けていた。
「ごめん、そんな触られると……」
取りつかれたかのように全身を撫でまわす常闇の手をそっと制止し、ホークスが気まずそうに呟いた。その言葉で我にかえった常闇は、慌てて手を止めると、耳まで赤面し口元を手で押さえているホークスの顔と、もじもじと擦り合わせている股の間とを見比べた。
「……触ってもいいだろうか」
「どーぞ。もう、いちいち聞かんでいいか、らぁ、っあ……!」
ホークスが言い終わるのを待たずに、常闇の指が下着越しに股間を擦り上げる。芯を持っているのを確かめるとすぐに、腰のゴムから中へと手を差し入れ、直接手を添えた。
「ん……」
他の部位を触れられた時とはちがう困惑した面持ちで、ホークスが唾をのむ。その表情を注視しながら、ゆっくりと手を上下に動かすと、高熱を持った肉塊は別のひとつの生命体のように常闇の手の中で脈打った。
「今まで、自分で処理したことは?」
「そりゃ生理現象だから、あるにはある、けど」
「けど?」
「自分でさわるのと、ぜんぜんちがう……っう、ふあ」
なにがどうちがうのかもっと詰問したくなる気持ちを抑えて、右手の動きは止めずに、もう片方の手をホークスの背中へと回す。力なく垂れている剛翼の付け根へと手探りで触れた。
いかほどの反応を示すのか、常闇にも未知の箇所だったが、ホークス自身にとっても虚をつかれたようだった。常闇の指先が根元の羽根に沿って皮膚を一度撫でただけで、びくり、と背骨が大きく湾曲するくらい全身を震わせた。
「あっ、そこやばい、かも……」
声色も震え、舌回りはたどたどしい。細いピアノ線を弾いているかのように、常闇の指先が羽根の付け根に触れるたびに喉と体が小刻みに振動する。
「……そうみたいだな」
こちらも限界だ。
下着を脱ぐ間も惜しく、一旦翼から離した手を使いスリットから自らを取り出し擦ろうとすると、その手の上から、別の手が重なって来た。
「おれは、許可とらんよ」
皮肉っぽく笑い、常闇自身の手を押し退けたホークスが、焦りからか、荒っぽい手つきで常闇のものを掴んだ。
「うっ……っはぁ」
互いの手と手、雄と雄とが擦れ合いぶつかり合いで、どちらの手がどちらを触っているのかも定かでない。先走りと汗に濡れ、荒くなる二人分の呼吸に粘ついた水音が混ざる。
「っあ、はぁ、……っぁあ」
左手を再びホークスの背中へと回し、先程の確かめた場所をピンポイントに狙って弄る。腕に抱え込んだ体をさらに引き寄せ、快楽に耐えるように常闇の首元に擦りついてくるホークスの、眼前に晒されたうなじを舐め上げ、長い耳たぶをピアスごと噛む。
それとほぼ同時に、ホークスの背がしなり、全身に最大級の緊張が走る。
「あ、も、ぃっ……!!」
ホークスが達するのに一拍遅れて、常闇もホークスの下腹あたりに精を吐いた。少し前からホークスの手はほとんど動いていなかったものの、常闇からすれば師の痴態を現実に目にしているだけでも、達するには十分だった。
「はぁ、……は、はっ……」
お互い乱れた呼吸を何とかコントロールしようとしながら、収まりついていない熱を誤魔化すように互いの首や髪をさすり合い、触れ合うだけのキスを繰り返す。
息がやや落ち着いてきた頃合いに、常闇はさきほど思い切り噛んでしまった左耳を擦りながら、ホークス、と呼び掛けた。
「……今日はもう、やめておこう」
「は?」
肩に手をかけ密着していた体同士を引き剥がそうとする常闇に、ホークスが唖然とした顔を向ける。
「いや、ここから先は、すぐにというわけにいかないだろう。今後ゆっくり――」
拷問並みに耐え難いとはいえ、常闇にはまだ理性があった。体の準備もせずに勢いでやって失敗すれば、二度と二度目が来ないかも知れない。ここで引くのが賢明、かつ紳士的だ──
「まった」
後ずさり、そのままベッドの上から降りようとする常闇を、目の据わったホークスが手首を鷲掴み引き留める。
「大丈夫、俺いけるから」
「それはどういう……」
根拠のない自信ともちがう、落ち着きのある物言いで断言され、常闇は思わず聞き返した。
「どっちになってもいいように、前々から、そのー…一応後ろも準備してある」
「は?」
常闇は自分の耳を疑った。数秒前のホークス以上に大きく口を開いて驚愕したまま硬直する。
「実地がまだだから、多分大丈夫、としか言えんけど」
「な、それは、前々とは、いつから」
「君が自分が異形だからどーたら言い出した後くらい。後輩のメンタルケアを怠ったことを反省した。それで、とりあえずできることをやっておこうかと思って」
テキパキと説明しながらも、表情は気恥ずかしげだった。その上に空いている方の手を自分の尻へと持っていくホークスを見て、常闇は眩暈に襲われていた。
「いや、でも、抱きたいと言ったのは言葉の綾で、俺はどちらでも……」
「あ~も~、いいから。俺がちょうど準備ができてて君はできてない。俺はここでやめたくない。ならそれでいいじゃん。俺ん中、入りたいんでしょ?」
本当に経験がないのか疑いたくなるほどの口ぶりで煽り続けるホークスに、常闇は目を白黒させるだけで何も言えなくなった。経験がないからこその、この勢いなのだろうか。気持ちだけが先走っていた自らの幼さを突き付けられているようで、悔しささえ感じる。
「……ダメ?」
常闇の手首を掴む手は離さないまま、手の平サイズの赤い羽根の一枚が、上向いたままの股間のものへと擦り寄る。別の一枚は、念のためにベッドサイドに用意していたコンドームを二人の近くまで引っ張ってきている。
ふわふわと股間に巻き付く羽根とホークスの表情に煽られ、質量を増した常闇の塊に浮いた血管がよけいに際立つ。
「ダメ、なわけがないだろ……!」
常闇が、後悔しても知らないからな、と怒鳴る勢いで言いながら掴まれた腕を振り払い逆にその手を掴み直すと、ホークスは、へえ、と挑発するような笑みを浮かべた。
本当に、人を煽ってやる気を出させるのがうまい師だ。
「痛いのは平気だと思う。それより、自分で慣らしてる時は正直あんまきもちよくはなかったから、そっちが心配かも」
枕を抱えうつ伏せになったホークスが、柄になく自信なさげな声をだす。
そうか、と短く返事をした常闇は、揉んでいた尻たぶから手を離し、目の前の背中に覆いかぶさった。
羽の間をくぐり抜け、ピアスの光る耳元に嘴を寄せる。首を曲げて振り返ったホークスの唇に指先を当て、低い声音で囁く。
「だが、今からあなたの中を暴くのはこの指だ。自分で触るのとは訳が違う」
揃えた二本の指先で軽く表面を擦ると、薄い唇は抵抗なく開き、口腔への指の侵入を許した。
「ん、ぐ……っは」
2つめの関節が隠れるまで差し入れた常闇の指に、意思を持って絡んでくる赤い舌。直に感じる体内の熱と体液のぬめりにあわや暴発しかけた熱を、太腿で挟んだ体に腰を押し付けることで耐えた。
唾液の糸を引きながら離れていく指を名残惜し気に見送るホークスの眼差しはハッキリと色めいている。経験がないという本人の談が、信じられなくなりそうだ。
常闇が余りある劣情を発散しようとローションのチューブを握りつぶせば、飛び出した粘液がゆっくりと尻の谷間を伝う。肌に液体が触れた瞬間にビクリと体を震わせたホークスは、そのまま枕を抱えた腕に力を込め、小さくちぢこまった。両翼も背中を覆う殻のように隙間なく閉じている。
優しくせねば、という気負いと、自分も男性相手は初めてだというのに、という不安。それにも増して強い、なにもかもどうでもいいからはやくやりたい、という原初的な焦り。
それらが引き起こしている指先の震えをなんとか抑え込んだ常闇は、割れ目に溜まった透明な粘液を慎重に掬い取り、窄まりに指を当てたがった。
自分で準備していた、というのは本当だったらしく、入口のわずかな抵抗を超えてしまえば、常闇の指は渦に飲み込まれるようにすんなりと奥へと進んでいった。
「……っは」
筋肉と筋肉の間に指を差し入れる初めての感覚。それを指先の繊細な神経で感じ取るのに集中していた常闇は、口を閉じることさえ忘れていた。
ず、ず、と抜き差しを繰り返す指の動きに対して、うー、と声にならないくらいの小さな唸り声が枕の方から聞こえる。
男性が肛門性交で快感を得るには――常闇は、ベッドに上がる直前にトイレで隠れて検索した内容を必死に思い出しながら、指先を操った。
「あっ、れ……んんっ……」
「痛いか?」
ふいにホークスが漏らした、鼻にかかった声。それが痛みからくるうめき声とは全くの別物だと、刺激を与えている側の常闇も理解はしている。
「いた、くない……けど、なんか、やだ、へんな感、じ……っつ」
「……ここか」
情報通りの責めが功を奏したと分かった常闇は、ここが前立腺か!と内心で勝ち誇っていた。その興奮を抑え、つとめて冷静に、ホークスの反応を伺いながら指を動かし続ける。
「あっ……ふぁ、……っあ、あ」
強かで賢しく一枚も二枚も常闇より上手なはずの師が、己の指のささいな動きひとつにあられもない声をあげ悦に入っている。
そんな状況に、冷静でい続けられるわけもない。最終的には、相手を確認する余裕もなく、自らの我慢の限界だけに任せて指を引き抜き、とうに限界まで張り詰め切っている屹立を握り込んだ。
すると、その動きを察したらしいホークスが、常闇の方へと振り返り、ちょっとまって、と呼び掛ける。
「ヒーローなら、セーフティーセックス」
ピッ、と指で弾き飛ばされた避妊具が、正確なコントロールで常闇の手元へと飛んでくる。ただ、常闇がそれを両手で受け取った後も、ホークスは振り向いた顔を元には戻さなかった。
「あとさ……この体勢のままするの?」
「は?」
「その…恋人同士って、顔見ながらするもんだと思ってたから」
不安そうに羞恥のせいか興奮のせいか、耳まで赤く染まり上がっている。
「あ、ああ、すまない。後背位が一番そちらの負担が少ないようなので。それに、仰向けになると羽が……」
常闇の説明の最中からホークスはすでに動き出していて、膝で弾みをつけて体の向きを反転させると、きっ、と眉尻を跳ね上げ、動揺している常闇を見据えた。
「べつに、仰向けでも短い時間ならだいじょうぶ。俺の体も剛翼も、そんなやわじゃなか」
しかし、と常闇も食い下がろうとはするも、言葉が続かない。
向かい合って顔を直視すると、途端に失念していた気恥ずかしさが顔を出す。
さっきまで聞いていた喘ぎ声。それ以上に甘くとろけ平時の鋭さを失った瞳で見つめられてしまえば、常闇は己が返すべき表情すらも分からなかった。無意識でこの双眸をしているならば、観念するしかない。
さあどうぞ、と自ら膝を持って開かれたホークスの両脚の間へとにじり寄り、代わってその脚を掴む。ほとんど力を入れずとも、太ももから腰へかけて体躯は素直に曲がり、指による刺激で赤くなっている秘所を常闇の眼前へと曝け出した。
先端の位置を目で確かめながら調整し、あとはもうわずかに腰を前に出すだけ。
そこまできてなお、逡巡してしまう。ほんとうにいいのか、という今更すぎる疑問が脳内を乱し、胃袋が喉元までせり上がってくる。
初体験の時でさえ、こんなには緊張していなかったというのに。
このままでは萎えてしまう、と危険を察知した常闇は、結局、ちらり、とホークスの顔を伺った。常闇の方を見て無言で細められた目に背中を押してもらい、ようやく最後の一歩分前に出る。
「ん、っぐ……ぁあ、あ…はぁ、はぁ…っ」
「……っう」
みちみちと隙間なく押し退け合う圧迫感で、どちらの額にも、それまでとは質の異なる油っぽい汗が滲む。
遅々とした動きで、それでも一度も止めることなく押し進み、奥の奥、近づいた互いの陰毛が絡み合うまでにたどり着く。
「全部、入りました」
「っは、っは…ん、意外と、いけるもんだね」
思わず任務の事後報告のような口調で状況を説明した常闇に、ホークスは両手で前髪をかきあげつつ笑顔を見せた。
「苦しくはないか?」
「ん、だいじょうぶ」
常闇の問いかけに、ホークスは手の平を自らの胸あたり水平に当て、トントン、と鎖骨を叩いてみせた。
「この辺まで、常闇くんでいっぱいになってるって感じ。でも、」
でも、で言葉を止め、腕を胸より更に上、顔も頭も超えた、シーツの上に広がっている髪のあたりにまで持っていく。
「今の気持ち的には、もうこのへん、ほかんこと考えとられんくらい、いっぱい、か、ぁも、って、ひぁ……!」
常闇は、ホークスが言い終えるのを待たずに、押し込んでいた性器を一気に出口近くまで引き抜いた。ホークスが頭の上に持ち上げていた手は、突如始まった刺激の波に耐えようと、そのままシーツを強く握りしめた。
「だからそれはっ…っは、わざと煽っているだろう……!」
「ぁあ、ん……っは、あ、あ、ぁあ……!」
肉がぶつかりあう一定間隔の破裂音。その隙間を縫うように嬌声が響き、開きっぱなしの2つの口から絶えず漏れる荒い呼吸音がそれを濁す。
常闇の腰の動きに合わせて、ベッドと背中との間で赤い羽も揺れる。
ガサガサと擦れるそれを見ていて居た堪れなさを感じた常闇は、一旦腰の動きを止めた。それから、横たわるホークスの腰の下に両手を差し入れ、ぐい、と力任せに持ち上げる。接合部もそのままに無理矢理体勢を変え、太腿の上に乗り上がってきた体を抱きかかえる。持ち上げた時に重さをほとんど感じなかったのは、極度の興奮状態のせいだろう。
軽すぎる、とさえ感じた体の、一番くびれている部分を鷲掴み上下に動かす。先端の凹凸で内壁を抉れば、荒っぽい刺激から逃げようとホークスの上体が大きく仰け反った。コントロールが効かないためか、反り返った背中では剛翼がバタバタと音を立てて羽ばたいている。
「も、っあ…きも、ち……」
常闇の肩にしがみついてきたホークスが、恍惚とした声で呟く。常闇の冷静さが、更に遠のいていく。
顔同士が近くなったのに乗じてキスをしようとしても、今のように乱れた状態では互いの口を合わせることさえもうまくできなかった。そのままならなさにさえ興奮を覚え、視線を混じり合わせたり、偶然触れ合った顔のどこかの部位を擦りつけ合ったりをキスの代わりにする。
「っは……とこやみ、く……っ!ごめ、ん、いっ……ぁあ!」
ホークスが吐精する瞬間に強くなった後穴の締めつけを、常闇は両端の奥歯を噛み締め耐えた。反射的に、今は耐えなければ、と思ったのは妙な意地だった。
放たれたホークスの精が、二人の顎のあたりまで飛んでくる。それを合図に、常闇は気の弛みと共に力の抜けているホークスの肢体を再びベッドへ倒して押さえつけ、無我夢中で腰を打ち付けた。箍はとっくに外れている。それを踏まえても、ここまでで一番遠慮も余裕もない動きだった。
「ホォ、…クス……ッ」
汗でしとどに濡れたホークスの胸板に額を押しつけ、苦し紛れに名を呼ぶ。すると、うん、と短い返事が寄越され、汗で湿っている常闇の後頭部を、ホークスの手の平が握りしめるように撫でた。
「きなよ」
極めて短い誘い文句。
なすすべもなく従うしかない常闇は、最奥を穿ったまま決壊寸前だった己の欲をおとなしく解放した。媚態に声にと翻弄されっ放しで、少しでも経験者の余裕を示そうと耐えたつもりが、自らの意思で耐えたのではなく、命じられ耐えさせられたのではないかとさえ錯覚しそうだった。
「っは…っは…」
常闇は、射精した途端に重たくなった全身を相手の上へと投げ出した。目前に、ホークスの嬉しそうな微笑みがある。その頬から首にかけてのラインを手の平で辿りながら、時間をかけて荒い息を整えた。
興奮が収まったところで、ちゃんと互いの顔の形を確かめてから、慎重に口を合わせる。唾液で濡れた柔らかい唇の感触が、嵐の後のそよ風のように胸を擽った。
「……おれ、はじめてが常闇くんでよかった」
キスの後で嘴の先を摩りながらそう囁くホークスの顔は、汗で額に張り付いている前髪のせいか、いつも以上に若々しく見えた。
そう思ってもらえたのなら、この上ない幸福――常闇が噛みしめた己の感情には、言葉にする間も与えられなかった。
「それで、このまま人生二回目も君としたいんだけど、どう?」
手短な睦言を切り上げ軽々と体を起こしたホークスが、常闇の肩を押して仰向けに転がし、すかさずその腰に跨る。張り付いていた前髪が手で払いのけられると、挑発的な視線が露わになった。
常闇を見下ろし返事を待つその強気な表情を見て、今から一体何がどうなるのかと、不安と期待のないまぜになった感情が常闇の胸に沸き上がる。この人の傍にいて、これまでに何度も感じた覚えのある複雑な感覚。これが、嫌な不安じゃないから、余計癖になってしまう。
無論、と返事をした常闇は、大空に身を投げ出す時の心持ちで、ホークスの手首を掴み自らの方へと引き寄せた。