きみが


 闇深い津軽海峡を渡りながら考え続けていた。
 求められているようで、本当に求めているのは自分なのだと。
 求められたいと求めている。自己愛と利己心の塊のような自分がみにくくて嫌いで仕方がない。
 かといって、今ここで翼を捨て、暗く冷たい冬の北国の海に落ちる勇気もない。
 彼から無理矢理にでも離れてあげようなんて、試みさえしない。
 漁船のポツリポツリと灯る火と、半島の形を象る函館の夜景が見えてくるころには、沸騰していた頭も幾分冷えていた。
 ランタンの暖色の光の渦から一転、馴染みのない街の夜景は人工的で冷たい明かりに見えた。
 熱が冷めるのが怖い。君の熱が冷めてしまうのが怖い。
 殻から孵って最初に見たという、ただそれだけで疑うことをしない君の目が、覚めてしまうのがいやだ。
 祭りが一夜で終わるように、朝になれば消えてしまうのかも知れない。
 夜もいやだけど朝もいやだ。いっそ時が止まればいい。
 肌を突きさすマイナスの空気。その風切り音にも増して、海鳴りがうるさい。うるさい、うるさい。
 はやく帰りたい。でも帰りたくない。
 どうしたらいいか、分からない。
 ねえ、君がどうしたいのかが、知りたいよ。

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