あなたの
自分は空っぽだと、自らをそう嗤うその人の内実は空虚でもない。
心に灯したまま一生消えないだろうエンデヴァーの火や、ことあるごとに悼みを重ねる分倍河原の死や。
簡単に捨てることができるのが自らの長所だと、そう自嘲するのに、自らの手で拾ったものや自らの意志で選び取ったものを、彼は決して捨てられない。
そのひとつが自分であると。その事実に対する喜びは何にも替えがたい。
なのに、彼の中を占めるすべてを押し退けて、ほんの一瞬でもいいから彼のすべてになりたがって、欲望のはけ口を愚かにも求めている。
恥じ入れ、卑しさを。