ツキハヒガシニ

    

SS

    
原作エピローグ軸小話 桜備視点
隣にいると



 シンラが創り直し、世界は果てがどこかも分からないほどに広くなった。
「おお、ドラゴン……」
 今回初めて訪れた大陸を西に進み辿り着いた、360度巨大な岩と砂としか見えない乾燥した荒野。高台に陣取ったので見晴らしは良く、ひとつふたつ向こうの岩場の陰からあらわれ空を悠々と横切っていく動物にもすぐ気がついた。手の平で庇をつくって目を凝らし、そのファンタジックな存在を認識すると思わず感嘆が漏れる。
「えらいデカそうだな。しかし、鳥にしちゃ不格好だろ。よくあんな羽で飛べるもんだ」
 隣に立つ新門が、非対称な目を細めることもせずぼんやりとした表情のまま同じ方向を眺め、感心した様子で言う。
「まぁー、なんでもありですからね。羽なんてなくても飛んでるのいっぱいいるし……」
「アイツを狩って飼い慣らしたら移動が楽そうじゃねェか?」
 本気で算段をしているのか、腰に差した刀に預けた左手の指先が、トントン、と一定のリズムで(つか)の頭を叩いている。それを横目に見ながら、人に危害がないものには手は出さないでくれとか、そもそも一撃で殺さない方法を知っているのか?とか、言いたいことがいくつか頭に浮かぶ。
「そういえば、新門総指揮も発火能力が無くなって飛べなくなりましたね」
「今更だな」
「……能力が戻ったらいいのにな~とか、思うことあります?」
「べつに、思わねェよ。おかげで紺炉の灰病が治ったってのに」
 先遣隊の様子見のためにこの場を離れている男の名前が出て、柄を叩いていた指先の動きも止まる。「優しいですね」と素直な感想を漏らすと、照れ隠しなのか横目上目で睨まれた。
「それに、今でも本気出せば家二ツ分くらいは一足に跳べる。体の軽さで言えば前以上だ」
 ふふん、と口端をわずかに持ち上げ、珍しく得意げな表情を見せる。楽しそうで何よりだ、と思いながら空に目を戻すと、まったく知らない別の空のはずが、東京の、というよりも浅草の空と同じに感じるから不思議だった。


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