SS 落火流水4の追加部分抜粋 タマキと紅丸の組み合わせ好きです 続きを読む ゴロ、と土のついたじゃが芋がひとつ、紙袋から転がり落ちた。 目の前でそれを見ていたタマキは、あ、と声を挙げたものの、両手はその芋が入っていた紙袋を抱えてふさがっているため、ただただ見ていることしかできなかった。 ああ、ごめん、助けられない―― 浅草の舗装されていない道へと真っ直ぐに落下していた芋は、地面にぶつかる寸前で誰かの手に受け止められた。 「ほらよ」 しゃがんでいた体をゆっくりと起こした紅丸が、掴んだ芋を野菜の詰まった袋の一番上に戻す。 「あっ……ありがとうございます」 驚きに目を見開いて、それでも咄嗟に礼が口を出た。敬礼も合掌もできない状態で、タマキは二つ結びにした頭を可能な限り深く下げた。 「しかし、えらい量だな。押し付けられたか?」 持ってやるとも言わずに無言で袋を取り上げようとした紅丸の行動を必死で制したタマキは、買い出しの袋を抱え直し、手ぶらの紅丸と並んで詰所までの道を歩いていた。 「いえ、私なんて、買い出しくらいしかできることないんで……」 「なんだ。この前一皮向けたと思ったら、また被り直しちまってるな。修行の効果はなかったか?」 「そんなことは……でも、結局誰かに守られて流されてばっかりだし……」 眉毛を八の字に曲げ、悩まし気な顔で俯く。紙袋に半分隠れたタマキの顔を横目で見おろした紅丸は、顎に手を当て、ふむ、と口を曲げた。 「鍛えるのも悪くはないが、使いどころってもんもある。俺だって、偶然浅草の火消しに拾われなきゃ益体も無いただの暴れん坊だ。流されてる内にお前ェさんの力の使いどころもどっかで見つかるだろうよ」 「……私は、消防官じゃいられなくなりそうだったところを桜備大隊長に拾ってもらった身です。だから、第八が大変な今こそ役に立ちたいんですけど……」 「守りたいもんが決まってるならいい方だ。なまじなんでも守れちまうと、かえって迷うぞ。何を守って何を守らないか」 「ゔっ…わぁ……贅沢な悩み」 「闇雲に強くなりゃ良いってもんじゃねェってことだ……ケツの青いガキには早い話か」 「弱いのはともかく、子ども扱いはやめてください。これでも、同じ一消防官なので」 ムキになって反論するタマキに、へぇ、と小さいながらも愉快そうな笑みを向けた紅丸は、丁度通りがかった十字路で詰所とは逆の、賭場がある方向へと道を曲がり去っていった。 畳む 2025/08/17
タマキと紅丸の組み合わせ好きです
ゴロ、と土のついたじゃが芋がひとつ、紙袋から転がり落ちた。
目の前でそれを見ていたタマキは、あ、と声を挙げたものの、両手はその芋が入っていた紙袋を抱えてふさがっているため、ただただ見ていることしかできなかった。
ああ、ごめん、助けられない――
浅草の舗装されていない道へと真っ直ぐに落下していた芋は、地面にぶつかる寸前で誰かの手に受け止められた。
「ほらよ」
しゃがんでいた体をゆっくりと起こした紅丸が、掴んだ芋を野菜の詰まった袋の一番上に戻す。
「あっ……ありがとうございます」
驚きに目を見開いて、それでも咄嗟に礼が口を出た。敬礼も合掌もできない状態で、タマキは二つ結びにした頭を可能な限り深く下げた。
「しかし、えらい量だな。押し付けられたか?」
持ってやるとも言わずに無言で袋を取り上げようとした紅丸の行動を必死で制したタマキは、買い出しの袋を抱え直し、手ぶらの紅丸と並んで詰所までの道を歩いていた。
「いえ、私なんて、買い出しくらいしかできることないんで……」
「なんだ。この前一皮向けたと思ったら、また被り直しちまってるな。修行の効果はなかったか?」
「そんなことは……でも、結局誰かに守られて流されてばっかりだし……」
眉毛を八の字に曲げ、悩まし気な顔で俯く。紙袋に半分隠れたタマキの顔を横目で見おろした紅丸は、顎に手を当て、ふむ、と口を曲げた。
「鍛えるのも悪くはないが、使いどころってもんもある。俺だって、偶然浅草の火消しに拾われなきゃ益体も無いただの暴れん坊だ。流されてる内にお前ェさんの力の使いどころもどっかで見つかるだろうよ」
「……私は、消防官じゃいられなくなりそうだったところを桜備大隊長に拾ってもらった身です。だから、第八が大変な今こそ役に立ちたいんですけど……」
「守りたいもんが決まってるならいい方だ。なまじなんでも守れちまうと、かえって迷うぞ。何を守って何を守らないか」
「ゔっ…わぁ……贅沢な悩み」
「闇雲に強くなりゃ良いってもんじゃねェってことだ……ケツの青いガキには早い話か」
「弱いのはともかく、子ども扱いはやめてください。これでも、同じ一消防官なので」
ムキになって反論するタマキに、へぇ、と小さいながらも愉快そうな笑みを向けた紅丸は、丁度通りがかった十字路で詰所とは逆の、賭場がある方向へと道を曲がり去っていった。
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