メモ 04/22 なう 梅田サイファーのウルサイレン発売記念配信見てます もしや原作ファンが名乗りを上げた結果があの参加メンツなのか? 書き下ろしジャケもいいけどOPEDともに通常版ジャケも良いんだよね 「強火」のあの、指を五徳みたいにしてるのめちゃカッコイイ 2025/04/22
SS シンラクサカベは受け入れられない 7 続きを読む 「子どもなんてのは、その辺で拾ってくればいいだろ。俺もそうだったんだ」 火縄副指令の助言に従い本人に伝えたところ、返ってきたのは、言われてみればないかにも本人らしい答えだった。今までに出自についてくわしく聞かされたことはないが、総指揮が先代の実の子どもでないことは浅草町内では周知の事実だから、俺も前に耳にしたことはあった。もちろん、そのことを気にするような人もこの町にはいない。 「ジジィも紺炉もそうだが、俺ァここの連中の誰とも血はつながっちゃいない。だからと言って縁が浅いとも思わねェよ」 ここ、と言いながら顎で指し示したのは町全体のことだろうけど、俺はとりあえず目の前の見慣れた裏庭に目をやった。そういうことでもないんだけど、と言いたくても、伝わるように話せる自信もなく「はぁ」と曖昧な相槌を返す。 思えば、浅草の詰所に訪れるのは随分と久しぶりだ。それでも、裏庭の土の色を見て匂いを嗅いだだけで、全身のそこかしこに負った傷の痛みとか、アーサーの間抜けな悲鳴とか、良いとは言い難い思い出が一挙に甦ってきた。 「――オイ紺炉! さっきから手ェ抜いてんじゃねェぞ! 病人面はもう通じねェからな!」 と、今まさにその裏庭で俺が連れてきた新入隊員に稽古をつけてくれている紺炉さんに、総指揮が突然怒声を飛ばす。理不尽な罵りに対して、紺炉さんは「なんで俺が怒られにゃならんのですか」と困惑した顔で頭を掻いている。ちょっと俺と話すから、と新門総指揮から紺炉さんに指導が引き継がれて最初は喜んでいた隊員達は、遜色無い、むしろ一層厳しいしごきですでに死体と区別がつかない状態になっている。あぁ、懐かしい。懐かしさしかない。 走馬灯を見て思わず遠い目になる俺と身勝手に活を入れて満足したらしい新門総指揮の間に、しばらく沈黙が流れる。死にかけの隊員の呻き声と鳥のさえずりをBGMに1分ほどたったところで、先に口を開いたのは新門総指揮の方だった。 「それで…………この前は悪かった」 俺は、まず自分の耳を疑った。今謝った?誰が?混乱のあまり、一瞬自分の目の前にいる人がどこの誰なのかが分からなくなった。 「イエ、俺の方こそ、出すぎた真似を……」 駄目だ、驚きで言葉が続かない。冷静に考えれば、俺の方からもっと早く先に謝りに来るべきとこなのに、咎めるどころか自分から謝った? これが本人だけの意思とは思えないけど……と考えていると、つい目が竹刀を振り上げている紺炉さんの方に動く。 「もし他にも聞きたいことがあるなら答えるが」 「え、なんでもですか?」 「ああ。ただし、くだんねェ質問だったらたたっ切るぞ」 つい喜びに顔を綻ばせてしまった俺に、すぐ牽制が入る。じゃあそれって、なんでもいいとは言えなくないか?と疑問が浮かんだけどスルーした。さっきから新門総指揮の目線はずっと縁側の方を向いているから、俺の位置じゃ横顔しか見えないし目も合わない。どこまでが本気でどこまでが冗談か判断がつかなかった。 「そしたら、桜備総隊長の、そのー、どこが好きなんですか?」 「初っ端からくだらねェな。……しいていえば…頑丈なところか」 そりゃ、総隊長以上に頑丈な人は世界広しと言えど中々いないだろう。恋人を好きな理由としては特殊な気がするけど、嘘ではなさそうだ。まだ俺の方がまともな理由を挙げられそうな気がしてしまうけど、しかしまあ、俺相手に言えるのはこんなもんか。 「じゃあ……そもそも、何がきっかけでお付き合いすることになったんですか」 その質問に対して、答えよりも先に、カチャッと鯉口を切る音が響いた。怯えた俺は、思わず全身を震わせ両手を咄嗟に自分の体の前に出した。が、2、3秒の間を置いて再びカチャ、と音がして、指揮官の手元では親指が刀身を納めていた。 「……お前、桜備が泣いてるの見たことあるか?」 「え? いや、多分無い……かな?? そもそも泣いてるイメージが全然ないですね」 突然の質問に首を大きく捻り、慌てて記憶の箱を引っ掻きまわす。そもそも人が泣いてるとこ自体があんま見ないけど、特に桜備総隊長は普段から笑ったり怒ったり感情表現豊かな割に涙のイメージが全然無い。その点、冷静沈着な火縄副指令の方がまだ想像しやすい。ああ見えて、動物が死ぬ映画とか見るといいとこで涙ぐんでたりするし。 「俺も無かった」 「無かった、ってことは、見たってこと……ですか?」 「まぁな」 「えっ、なんの時ですか? なにが理由で?」 「俺が泣かせた」 「げ」 思わず、上官の言葉に対する反応としては不適切な声と表情が漏れ出てしまった。 「泣いてるとこが見てみたくて泣かせて、それを見た時に、この先俺以外に泣かされるようなことがあったらソイツを俺が殺すと決めた」 正直俺には理解しがたい感覚だが、この人が言うと妙に説得力がある。本当に殺しそうだし。 将来的に出るかもしれない被害者を哀れに思ってゲンナリとした顔をしていると、新門総指揮が右腕を持ち上げて片肌脱ぎながら、突然話を変えた。 「シンラ、お前もう酒呑める齢だよな?」 「まぁ、一応は……」 「お前のことを弟子だと思ったことはねェんだが、事実だけみればそうなっちまう。俺はそれが嫌なんだよ」 ほれ、と雑に渡された杯を、慌てて両手の平を差し出し受け止める。何がしたいのか、意味を理解した俺の内心では、緊張に心臓が跳ね始めていた。かつて、杯を交わすその場にも、そこに至るまでにも居合わせた。小さな杯でもずしりと重みを感じる。俺は縁側の外にぶら下げていた足を引き上げ、新門総指揮の方を向いて居住いを正した。 「……さっきの話だが、血の繋がりがある家族が欲しいと思ったことが、まったく無いって言ったら嘘になるかも知れねェな」 新門総指揮が、大きな酒瓶を膝の上に抱え、蓋を捻り開けながら言った。 「ただ、今の世じゃ大事なのは血よりも魂だろ。姿形を作るのが血だとしたら、もっと芯の部分を作ってんのが魂だ」 淡々とした調子で話しながらも動き続ける手で、俺が両手で差し出した杯にトクトクと透明な液体が注がれていく。縁側に差し込む太陽の光を反射して、黄色っぽい水面がキラキラと輝いて見える。新門総指揮が胡座をかきなおして俺の方に体を向ける。正面で向き合うと、両方の赤い目の色もハッキリと、炸裂した花火みたいに輝いて見えた。 スッとこちらに差し出された杯に、俺も手の震えを必死に押さえながら応える。 「だから、俺の血が誰にも繋がらなくても、俺の魂はお前が代わりに未来に持ってけ」 そう言って微笑むと、杯に口をつけ一気に中身を煽った。俺も慌てて真似をし、陶器でできた杯に口をつけた。が、飲んでしまってから思ったけど、日本酒を飲むのは人生で初めてだ。うまいまずいの次元じゃない。それに、これはただの酒じゃなくて人類最強の男の魂の欠片が入っている。火の玉を飲まされたようなしんどさだった。それでも、言われた返事はしなければと喉の違和感に堪え、できるだけ真面目な顔をつくる。 「……はい。了解です」 俺の返事を聞いた新門総指揮は、なんでこうなるのか未だに分からない酔った時の妙な笑顔で頷いた。それから突然その場でスクッと立ち上がると、一度遠くの方に目線をやってから、頭を斜めに傾けて俺を見下ろした。 「……桜備とも、その内別の杯を交わすことになる。三献の儀は本当は神様の前でやるもんだが、生憎浅草(ここ)には決まった神様がいねェからな」 「さんこん?」 「だから、そん時はお前が立ち会え。森羅…万象マン。曲がりなりにも神様なんだろ」 「いや、だから! 俺は神様じゃないって、いっってぇ!!!?」 「オラ、おしゃべりは終いだ。まさか茶と酒だけ飲んで帰れると思ってねェだろうな?」 突然の背中への衝撃の後、頭上から明るい声色で不穏な言葉が振ってきた。縁側から蹴りでど突き落とされた俺は、手の平と頬で感じた土の感触に、過去の辛い記憶が今から上塗りされる恐怖の予感がした。 畳む 2025/04/20
メモ 4/20 はずい 一個前の投稿 このままじゃCP小説としてどうなん?と思って予定になかったイチャイチャを挟みました あと2つで終わるはず --- オセロニアのオービ大隊長が一番カッコイイ角度の!一番カッコイイ瞬間!すぎてメロる アーサーのためみたいな世界観だから良かったねアーサーと思いながらやってます(手元には来てない) --- 「紅丸に手を出させないために先に自分が手を出す紺炉、な紺備で紅→備」という爛れた設定を思いついてしまったので<続きを読む>にちょっとメモ 続きを読む 健在だった頃の先代がよく言っていた。「あの大馬鹿野郎には、口で言っても無駄だ。犬と一緒で、殴られねェとなにが悪いか分かんねェんだ」。今となっちゃ俺も同感だ。叱るのも褒めるのも、どんなに言葉を尽くしたところであのはねっ返りにはちっとも響きやしない。 第八が気のいいやつらなのは俺も認める。盃を交わしたのにも不服はない。だが、それ以上は駄目だ。 ずっとお前を傍で見てきた俺にはよく分かる。アイツは紅と同じなんだよ。ただ立ってるだけで人を惹きつけるし、普通の人間じゃ抱えきれないくらいのもんがオマケでどんどんついてくる。強えもん同士でくっついてどうなるよ。太陽に別の太陽が必要か? 色恋なんて博打みたいなもんだ。それで、俺の勘は絶対に引くべきだと言っている。 駄目だ、惚れるなと、言葉で言ってもどうせお前聞きやしないだろ? かと言って、頭(かしら)を問答無用で殴るわけにもいかないしな。 だから、俺が鳶(トンビ)になって目の前で掻っ攫う。 手の届かない葡萄ってのは酸っぱいもんだ。味も知らずに終われば、記憶にもそう強くは残らずにすーっと忘れてくさ。 お前のためだ。悪く思うなよ、紅。 畳む 関係ないけど、相模屋紺炉は浅草中の女(も男も)抱いてるだろと思ってます 願望 あと作中で紺炉さんが火華って呼ぶとやたらにドキッとしてしまうんですけど あそこ2人ってフラグ立ってない?立ってないか… 2025/04/20
SS シンラクサカベは受け入れられない 6 続・焚き火の夜 ※事後 続きを読む 事が始まってから終わるまで、焚火の炎は二人の熱の盛り上がりに寄り添うように明々と燃え続けていた。その炎の前に座り怠い表情でゆっくりと着衣を直す桜備の横で、紅丸は一応話が済むまではとさっきは我慢していたらしい酒を手にさっさと一人破顔している。 「しかし、途中で誰も来なくてよかったですね」 炎を見つめながら投げやりに言った桜備のその言葉は皮肉だった。が、皮肉を言った相手には伝わらない。 「さすがに、今日の今日で出歯亀するやつぁいねェだろ」 そう言った紅丸は、最後にくく、と喉を鳴らし上機嫌に笑う。欲と本能に任せているようでそれなりに計算高く物事を考えているところが、聞いていた桜備の勘に触った。つい、不満を明け透けにした低い声で文句のひとつもいいたくなる。 「そもそも、こっちの言うことなんでも聞くって約束も守ってないですよね」 「あぁ? ちゃんと守っただろうが」 すかさず否定が返ってくるが、桜備の方に聞く耳はなかった。 少なくとも2つ、せめてテントまで移動したいと言ったはずが最後まで野外で片付き、挿れるなら避妊具をつけろという要望も黙殺された。その他、言った以上のこともされたし、言ってないこともされた。 「文句あんなら言ってみろよ。それとも、他に何かお望みだってんなら聞くぜ?」 半眼で睨む桜備に、紅丸が前髪をかきあげ目線を返しながら挑発的な物言いをぶつける。少しの無言の間を埋めるように、焚火がパチパチと木の爆ぜる音をたてていた。 「じゃあ………………結婚してくださいよ」 長い間を置いた後、桜備は火の燃える音にギリギリかき消されないくらいの声量で呟いた。その要望を聞いて一瞬で酔いが覚めたのか、紅丸の顔が笑顔から真顔に戻る。 「なんだって?」 「結婚。法的な契約婚。半分はもう、シンラのためですけど。手っ取り早いじゃないですか。喧嘩するよか本気度も伝わるし」 「お前ェ、ヤクザもんの、しかも頭との結婚がどんだけ面倒か考えたことねェだろ」 今の世においては浅草界隈も言うほどヤクザ者ではないのだが、その辺りは立場というよりは思想の問題なので口を挟むべきではないと桜備も心得ていた。代わりに別の反論を、相手の睨みを凌駕する勢いで返す。 「どう考えても、このままズルズル続ける方がめんどくさいでしょうが!」 「なっ……こっちの気も知らねェで…そもそも半分シンラのためってのがどういう了見だよ」 「シンラに限らず、いつも説明に困るんですよ! いい歳した大人が中途半端な関係ダラダラ続けてるの、嫌にもなるっての!」 「それだって、この先てめェが色々とやりにくくならないためだろうがっ!」 言葉の勢いに合わせて反射的に首元に伸びてきた紅丸の手を躱して払いのけた桜備は、カウンターで突き出した拳で相手の胸倉を掴み、自分の方へと引き寄せた。額同士がぶつかる直前で止め、互いの眉間の皺を突き合わせ、瞳孔の開いた赤い目と睨み合う。 「へ~、俺のため。それは初めて聞いたな。天下御免の新門紅丸にそんな殊勝な考えが生まれるとは」 「殊更お前ェを担ぎ上げるつもりもないが、別に邪魔してやりたいとも思わねェからな」 「そもそも、あんたどうなったって止めるつもりも手放す気もないだろ?! こっちだってね、愛されてる自信はなくても、愛してる自信なら十分にありますから! 俺が根を上げるの待ちだって言うなら、待つ時間が無駄になりますよ。俺も、どうせこの先手放す気なんてない、ん、で……」 勢いづいてヒートアップし語気を荒げながらも、途中から相手の反応が無くなっているのに桜備も違和感を覚えていた。そして、ふと、掴んだ胸倉の上のそっぽを向いて黙りこくっている顔を見て言葉を失った。 どの言葉がクリティカルヒットしたのかは皆目見当つかないが、口元を手の甲で押さえて何も言えなくなるほどに、見えている部分の肌が炎の色以上に赤くなるほどに照れさせてしまったらしい。 桜備は、ああもう、と悔しさを噛みしめ一度天を仰いでから、胸倉を掴んでいた手を離し、その手で口元を押さえている紅丸の手を掴み退かした。それから、何か言おうと開きかけた口を黙らせるように唇を重ね、不毛な会話を終わらせた。 畳む 2025/04/20
SS シンラクサカベは受け入れられない 5 続きを読む 桜備総隊長が朝からずっと露骨に俺を見ている。遠征先でのアレについて話をしたいんだろうと勘づいてしまうと、俺の方からは声を掛け辛い。気づいていない振りをしつつ、部屋の入口の陰でウロウロしている巨体をチラチラ横目で確認するだけに留めていた。すると、その更に後ろから火縄副指令の姿が現れたのも見えて、俺はつい慌ててしまった。 ああっ、ほら、後ろから火縄副指令が来てますよ。またサボってるって怒られる―― が、俺の心配とは裏腹に、火縄副指令は総隊長に背後から話しかけて一言二言だけ会話をすると、すぐに俺のデスクの方へと真っ直ぐに歩いてきた。 「シンラ。お前キャッチボールはできるか?」 「は?」 思った通り、火縄副指令のボールコントロールは完璧だった。俺が一切動かずとも倉庫から引っ張り出してきた使い古しのミットに球が自然と吸い込まれていくのを見て、素直に感動した。 「なんだ、普通にうまいじゃないか」 俺が投げ返したボールを数回受けたところで、副指令が感心した様子でそう言った。 「まぁ、ベースボールは俺らが子供の時はあんま流行ってなかったけど、学校の授業とかで一通りやらされたんで。それより、火縄副指令がキャッチボールする方が意外ですよ」 ボールを投げながら会話を続ける。間に10mくらいの距離はあるが、騒々しい現場でも通るような声の出し方はお互いに心得ている。 「20年以上ぶりだ。幼い頃に父親と休みの日によくキャッチボールをしていたんだが、久しぶりでも意外とできるもんだな」 「へぇ。でも、副指令のこども時代か……」 想像して、つい頬が緩む。イメージ的には再会した頃のショウに似ていて、それでやっぱり眼鏡だし、どちらかというと家の中とか図書館にいそうで、友達と公園で遊んでる姿はあまり想像できない。 「父は、俺に似て不器用な人間だった。親子のコミュニケーションの仕方も、教科書で学ぶかのように有り体の型を試すしかなかったんだろう」 公園で父親とキャッチボールか。母さんは寂しさなんて感じさせないくらい愛してくれたけど、憧れないのはやっぱり無理だった。そういえば、まだ赤ん坊だったショウに「大きくなったら一緒にキャッチボールしような」と話しかけたこともあったような。 「……でも、それだけ副指令のお父さんも頑張ってくれてたってことですよね」 「まあな。正直ウザいと思うこともあったが、今なら父の苦労もよく分かる。……あの頃の父の年齢は、もうとうに追い越してるんだ」 副指令の投げたボールの軌道が、中心からわずかにズレた。頭より先に、目と手がそれを追う。すかさず腕を伸ばして捕球し元の位置に戻ると、副指令が「休憩しよう」とグローブを外しながら俺の方へと歩み寄ってきていた。そのまま傍にあるベンチに二人並んで座り一息つくと、すぐに話の続きが始まった。 「俺の家は父子家庭だったんだ。男手一つで育ててくれた父も俺が第8に入隊する直前に病気で亡くなった。それでいつだったか……俺が高校生になったばかりくらいの時に、父の再婚話が持ち上がったことがあった。職場の上司からの紹介で、なかば見合いのようなものだったらしい」 「ショックでしたか?」 「どうだろうな。ショックだったのかも知れん。態度に出していたつもりはないが、しばらくして破談になった結末を思えば、父本人には動揺がバレていたのかもな」 そこで言葉を切ると、被っていたキャップを外し脇に置いた。汗で湿った髪を指で軽くほどく動作の後、後頭部に手を置いたまま数秒停止してから、また口を開く。 「俺も一度だけ顔を合わせたが、聡明そうで綺麗な女性だった。彼女と再婚していれば、あるいは父の余生ももっと幸せだったのか……」 語尾を濁したまま眼鏡を指で押し上げた火縄副指令の横顔を見る。相変わらず表情筋はピクリとも動いていなかったが、茶色い瞳は少しだけ揺れていた。 「あの……桜備総隊長に頼まれたんですよね? 俺と話してくれって」 「ああ。というより、俺が代わりに話を聞いてもいいかと進言したんだ。シンラと話すにしても俺の方がまだマシだと思ってな」 「マシ?」 「片親がいない立場、その片親を亡くす立場をどちらも一応は経験している。……無論、まだマシ、という程度の差ではあるがな。相談に乗っておいてなんだが、他人の感情の機微に疎い自覚はあるんだ」 「そんなことないですよ。火縄副司令は人の気持ちに寄り添える人だ。そもそも、そうじゃなきゃ第8になんて入らないでしょ」 「なんて、か。違いないな」 フッ、と、口元にささやかな笑みが浮かぶ。今日初めてかもしれない火縄副指令の笑顔だった。 思えば、火縄副指令から家族の話を聞くのは初めてだ。こんなカードまで切らせてしまった原因が自分にあると思うと、罪悪感で胸が痛い。 「実は、ちょっとモヤモヤしてることがあって。聞いてもらってもいいですか?」 「……相手が俺で構わないなら」 「俺、この前あのお二人の関係を知って……はじめてインカの気持ちが分かっちゃったんです」 これは、この前アイリスに会った時にはすでに思っていたことだけど、到底彼女に相談できる内容じゃなかったから黙っていた。誰かに言うこともないだろうと思っていたその考えは、いざ口に出してみると余計に嫌な気分になった。 「アイツが言う「この星を救った英雄の子供が欲しい」ってワガママ……俺も似たようなこと考えてたのかも知れないって」 「…………インカに桜備総隊長の子どもを産んで欲しいのか?」 「いや! 違いますよ! なんでそうなるんですか?! つーかそれは絶対に嫌です!!! ……そうじゃなくて、相手は誰でも…インカじゃなきゃ誰でもいいんですけどね。ただ、女性と結婚して子ども産んでって、普通にそうなるもんだと思ってたから、そうならないのかって思ったら……おれが一番ショック受けてるの“ソコ”なのかもなって。桜備総隊長もですけど、新門総指揮も……」 「優秀な遺伝子を後世に残したいと考えるのは、動物としては自然な思考回路とも言えないか」 「だとしても、こんなの人類の未来なんて関係ない、俺の個人的なエゴですよ。子供を産んで欲しかっただなんて」 俺がぐしゃぐしゃと両手で頭を掻きながら下を向く一方、火縄副指令はスッと顎を持ちあげ、視線を上に向けた。俺もつられて顔を上げる。今いる裏庭のベンチから見て丁度目の先にあるのは、英雄隊本部であり元第8特殊消防教会の一番高い鉄塔、の裏側だ。 「……「あなたはこの城の王であり隊の父にもなる」。第8を結成して間もない、まだ“桜備大隊長”だった頃に、そう話をしたことがある。しかし、今思えば不思議なんだ。なぜあの時に彼を“父”と言ったのか。父親を失ったばかりの自分が、感傷や希望の甘さに浸り二人の面影を重ねたのか。自らの家族を求める思いがつい口を出たのか……」 「でも、俺も総隊長に対して思ったことありますよ。父親がいたらこんな感じかなーとか」 「だが、そもそも俺の父はどちらかと言えば気弱なタイプで、優しくはあってもリーダーシップや大黒柱という言葉とは無縁だった。だから、自分の親に重ねたというよりは、何にも関係なく、ただあの人に“そう思わされた”んだろうな」 「人類の父か…」 西に傾きつつある太陽の光を反射し輝く鉄塔を眺めながら、頭に浮かんだ言葉をポツリと呟いてみた。それはあまりにも正しい呼称で、だからこそ虚しく空回りしている響きがあった。 「今の話だが、どうせなら直接伝えてみるといい。あの2人のことだ。すでに、よほど簡単な解決策を考えているかも知れない」 「え~……ご本人たちにですか? それはさすがに……」 「救って欲しい。救われて欲しい。こうあってほしい――そういう身勝手なエゴを受けとめられるのもひとつの強さだ」 副指令は及び腰になっている俺をハキハキとした口調でそう諭すと、キャップを被り直して「続きをやるか」とベンチを立った。相談の口実と思いきや意外と楽しんでいたらしいと分かった俺は「次、カーブ投げていいですか?」と聞きながら腰を浮かせ、かけ足で後を追った。 畳む 2025/04/19
絵 ヴァルカン誕生日おめでとう! ギリ間に合わなかった誕生日絵 ヒロアカの推しと誕生日が被ってたので自己満クロスオーバーを描きました ⇒こちら 突貫でいろいろ粗いけど、二次創作してるぜ…!って感じで楽しかったです ヴァルカン単体でものすごく好きなんですが ヴァルカン、シンラ、アーサーの関係性の良さはなんかもう形容しがたいものがある いとおかし 2025/04/19
梅田サイファーのウルサイレン発売記念配信見てます
もしや原作ファンが名乗りを上げた結果があの参加メンツなのか?
書き下ろしジャケもいいけどOPEDともに通常版ジャケも良いんだよね
「強火」のあの、指を五徳みたいにしてるのめちゃカッコイイ