理由-間
あー、どうして彼を手放したのかって? 気になりますか?
それは、あれです。俺が、彼の師匠失格だからです。ま、元々師匠になんてなったつもりはなかったんですが。
俺も、多くのヒーロー志望者と同じ道を辿ってきました。幼い頃にあなたみたいなヒーローと出会って、生きる目的を見つけた。
俺にとっての彼は目的じゃなくて、理由です。生きる理由で、未だにヒーローで居続けている理由です。
でもそれが厄介なのは、俺にとっては、でしかないってとこで。
この先も一緒にと打診していれば、いや、そう伝えるまでもなく、彼は俺を追い続けると思います。
とっくに追い越してしまっていることにも気がつかずに、ね。
本当は、俺を追いかける必要なんてもうないんですよ。
追い越してくれて構わない。
でも、追い越したまま去って行ってしまうのは嫌なんです。
とっくに追い越していることに気がつき振り向いた彼に、すがりついて引き留めてしまう自分自身を想像します。
自分の方が遅くて弱くて汚れていても、それでも離れないでくれと、そう乞い願うような人間が師匠を名乗ることは許されますか?
遅かれ早かれ、彼は俺の傍にいる理由なんて無いことを知るんだと、そう分かったら、漫然と手元に置いておくのが怖くなりました。
それで、帰巣本能を試す実験みたいな賭けに出て、結局、自分の親よりも余程酷いことをしてる。
ただ、彼が別の巣をみつけるのならそれでもいいって、本心からそう思ってはいるんですよ。嘘だと嗤うでしょうけど。
一度個性を失った時、あってもなくても構わないはずだったそれを、取り戻したいと強く願いました。ただの道具だと思っていたものが、自分自身の一部だったことに気づいた。
強いて言えば、あの経験が一番の理由かも知れません。
もちろん、現実的な効力なんかなくても、ただ思ってくれるだけでいいんです。
剛翼がなくても俺が元気に生きられたように、俺がいなくたって、彼には元気に生きていって欲しいし。
だから、これは欲深い俺の祈りでしかなくて。
あの子の中にも、俺の傍にいる理由があってほしい。
できることなら、俺もあの子が生きる理由になりたい。
……あなたにとっての、ご家族がそうであるみたいに。
あ、困らせようと思って言ったわけじゃないすよ。本心ですから。
心から尊敬してます。あなた・・・・・・というよりはむしろご家族の方を。
俺だって、ちゃんと向き合って伝えるのが一番だってことは分かってます。
でも、意気地がないとこはあなたも俺も似た者同士ですからね。
良かったら背中押してくださいよ、No.1。